労働条件

【最新】特定処遇改善加算「経験10年」「月額8万円UP」結末は…?

こんにちは、ごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。

私は、新卒で介護業界に飛び込み11年間介護現場や管理職を経験してきました。
その後、転職コンサルに5年間従事し、現在は介護コンサルをする傍ら、介護現場で介護士としても現場のお手伝いをさせていただいています。

そんな元転職コンサルでもある私、ごろにぃがオススメしている転職サイト(エージェント)が、しろくま介護ナビです。

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それでは早速本題です。

既に介護業界でも何度も話題になっている「2019年10月の特定処遇改善」
(途中経過の以前の記事はこちら

世間では「経験10年以上の介護福祉士は月額8万円アップ?」この言葉ばかりが一人歩きをしていましたが、この着地点がようやくまとまりましたので、私なりに分かりやすくまとめたいと思います。

 

「2019年10月からの特定処遇改善加算」制度概要

まずこの10月からの特定処遇改善加算について、制度の概要を振り返りたいと思います。

特定処遇改善加算の「目的」

今回の特定処遇改善加算の目的は、深刻な介護士不足の背景を踏まえて「人手不足の解消に繋げる」ということです。

そして大きな特徴は「ベテランが重視」されるという事です。

過酷だと言われる介護業界。そんな中で「辞めずに頑張り続けても給料が上がっていかない。」こうした不満を解消する事がポイントです。

将来の生活をイメージしやすくし、キャリアアップの道筋を分かりやすくしたりすることで、新たに介護業界にチャレンジする人たちの増加や現職である介護士の離職の防止につなげたいとしています。

 

特定処遇改善加算の「財源は年間2,000億円」

ちなみに今回の特定処遇改善加算の賃上げの為に使われる費用は「年間で約2000億円」だと言われています。
そしてこの年間で2,000億円必要だとする根拠の元となる数字が、世間で独り歩きしている「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の処遇改善を行う」というものです。

ちなみにこの2,000億円の具体的な財源としては、消費税を10%へ引き上げる事で生まれる公費が約1,000億円。
残りの1,000億円は、40歳以上の保険料と利用者の自己負担で賄うとされています。

これを介護報酬の改定率に換算するとプラス1.67%になるとされています。

 

特定処遇改善加算の「算定要件」(対象となる事業所)

そして注意しなければならないのは、今回の特定処遇改善加算については、全介護事業所が無条件に取得できるわけではないという事です。
他の加算と同様に算定の要件が定められています。

■特定処遇改善加算の算定条件

  1. 現行の処遇改善加算の「加算I」から「加算III」のいずれかを取っていること
  2. 介護職員処遇改善加算の職場環境等要件における「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」のそれぞれを1項目以上実施していること
  3. 処遇改善の取り組みを情報公表制度やホームページへの掲載などを通じて「見える化」していること

以上のような算定条件が設定されています。

ちなみ①の「現行の処遇改善加算の加算I~加算Ⅲのいずれかををすでに取っていること」について、詳細は割愛しますが、既に現行でも90%程度の介護事業所が加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得していますので、多くの介護事業所は適応対象となります。

②の「介護職員処遇改善加算の職場環境等要件」については、厚生労働省より以下のような通知が出されています。

職場環境等要件の報告に関する通知様式

③の「見える化」に向けた取り組みについては、処遇改善加算の算定状況や、賃金以外の処遇改善に関する具体的な取り組み内容の公表が想定されており、「ホームページの活用」に限らず、事業所・施設の建物内の入口付近など「外部者が閲覧可能な場所への掲示」等の方法により公表することも可能である―ことが明確にされています。

 

特定処遇改善加算の「サービス区分別の加算率」

肝心の「サービス区分別の算定率」については、以下のようにまとめられています。

(引用)介護のニュースサイトJOINT

これらのサービス区分別の加算率は各サービスの勤続10年以上の介護福祉士の人数×8万円」をベースに算定されています。
例えば、訪問系の加算率が非常に高く見えることについても、「訪問系は高齢の介護者を中心に経験年数の長い介護福祉士が多く勤務している」という事に起因しています。
要は、経験・技能のある介護職員が多いサービスを高く評価するという狙いが明確に現れています。

加算の種類にについても、算定の取得難易度についてに合わせて、加算率の高い「新加算Ⅰ」と加算率の「新加算Ⅱ」の2パターンがあります。

「加算I」を取得するには、サービス提供体制強化加算(最も⾼い区分)、特定事業所加算(従事者要件のある区分)、⽇常⽣活継続⽀援加算、⼊居継続⽀援加算―のいずれかを取得していることが必要となります。
また「加算Ⅰ」については、手厚い「介護福祉士」の配置についても条件になってきます。

これらのように、今回の特定処遇改善加算については介護福祉士の配置を前提に、少しでもベテラン介護士の多い介護事業所が恩恵を受けられるように調整された制度と言えます。

 

結局、賃上げ対象の「経験10年以上の介護福祉士」という定義はどうなったのか?

そして散々言葉だけが独り歩きした「経験10年以上の介護福祉士への賃上げ」という言葉。
これについて、「経験10年以上の定義は個々の介護事業所の裁量で設定できる」という結論で落ち着いています。

要するに

  • 「同一の法人で10年以上働いていなくてもOK」
  • 「介護福祉士の資格を取ってから10年以上経っていなくてもOK」
  • 「別の法人に務めていた期間も、医療機関で仕事をしていた期間も、障害福祉の現場を支えていた期間も考慮してOK」

最終的には、介護福祉士を取得していれば必ずしも「経験10年以上」にこだわって考える必要すらなく、そのスキルや仕事ぶりなどを勘案し、事業所が「この人は経験・技能のある介護福祉士だ」「この人の給料を上げたい」と判断すれば、今回の特定処遇改善加算による賃上げの対象にしても構わないという事になります。
(参考)審議会での厚労省説明資料

厚労省が重視しているのは、現場を牽引するリーダー級の介護福祉士が最も高く評価されることであり「経験10年以上」はあくまでも目安です。
逆に言えば、
10年以上の経験がある介護福祉士であっても、経験年数が長く資格を持っているだけでリーダー級とは言えない人は、対象から外してもよいと言われています。

わかりやすく言えば、
「国は基準を示しました。ただし、最終的にどのようにするかは、個々事業所の都合もあるので、事業所毎に裁量をもって進めてください」
という事です。

 

特定処遇改善加算の分配方法

そして、特定処遇改善加算の分配方法についても基準のみが示されており「あくまでも各介護事業所に任せます」という事です。

加算分配の基準についは以下の通りです。

各介護事業所の職員を3つのグループにわけます。
①経験10年クラスの介護福祉士
②その他、介護士
③介護士以外の職員

①は、上でも書いたとおり「経験10年クラスの介護福祉士」であり、必ずしも10年である必要はなく、各事業所に委ねられます。
そして①の職員層が、今回の特定処遇改善加算で大きな恩恵を受けることができる層です。

そして、こらら①~③に対しての分配のルールが大きく2つです。

■特定処遇改善加算の分配基準

(区分)
①経験10年クラスの介護福祉士
②その他、介護士
③介護士以外の職員 

 

(基準)
A:平均処遇改善額が「①の改善額≧②の改善額×2」&「②の改善額≧③の改善額×2」となるように調整すること

B:区分①のうち最低でも一人が「月8万円以上の処遇改善」もしくは「年収440万円以上」を確保すること

要は明確に、①の経験豊富な介護士への処遇改善を優遇する一方で、その他介護士や介護士以外にも恩恵が及ぶように調整が可能となっています。

こうした基準と裁量の中で定められたものが今回の特定処遇改善加算だと言うことになります。

 

特定処遇改善加算のまとめ

結果として、元々制度設計の際に、独り歩きした「経験10年以上」「介護福祉士」「月8万円」「年収440万円」といった表現は残りつつも、最終的にはうまくバランスを取る形で着地したのが、今回の特定処遇改善加算だと言えるのではないでしょうか?

個々事情を持ち合わせる事業所に裁量権がある点は、メリットという見方もできます。
その一方で「裁量権が介護事業所に委ねられるが故に、正しく恩恵を受ける事ができない」というケースも過去の処遇改善では起きてきました。

そうした意味ではこうした裁量権を残した点が、各介護事業所にどのような影響を与えるのかが非常にみものではあります。
また裁量権を与える事で、各介護事業所での定義付けや事務処理などの負担が増した事は明確であり懸念点でもあります。

それでも少なくとも、今回の特定処遇改善加算は介護業界にある程度のインパクトを与える施策には成り得るものだと思います。

後は、この制度がどのように活用されていくのかをじっくり見守り、また変化があれば発信していきたいと思います。