現場リアル

「利用者による暴力や殺人未遂」介護職は利用者対応を考える時代

こんにちは、ごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。

私は、新卒で介護業界に飛び込み11年間介護現場や管理職を経験してきました。
その後、転職コンサルに5年間従事し、現在は介護コンサルをする傍ら、介護現場で介護士としても現場のお手伝いをさせていただいています。

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それでは早速本題です。

最近は介護現場でも物騒な事件が起きてしまい、何かとニュースになることが少なくありません。

特にかつては、虐待や暴力など「介護士側が加害者」として取り上げるものばかりだったところに、最近は「利用者側が加害者」として逮捕されるようニュースが増えつつあります。

直近だけでも介護施設における利用者による切り付け事件が立て続けに発生しています。

  • 9月10日千葉県富津市の介護施設で利用者が別の利用者をナイフで切りつける
  • 9月18日横浜市旭区の介護施設で利用者が介護職員と別の利用者を包丁で切りつける

ナイフや包丁で切りつけるわけですから、これは完全に殺人未遂。

もちろんこうした事例は一部に過ぎませんが、事実一部の介護現場では、確実にこのようなリスクを背負いながら働く必要がでてきているというのが、昨今の介護現場です。

それにも関わらず、未だに世間の大半は

  • 「高齢者と言えば、皆さん穏やかな方ばかり」
  • 「利用者さんは無条件に守られるべき存在」

というようなイメージばかりが先行している気がしてなりません。

だからこそこのような状況下で、介護士はどのよう利用者さんと向き合いつつ働くべきなのかについて、少し考えてみたいと思います。

 

「利用者の凶暴化」と言える昨今の事件例

まず利用者さんの凶暴化や事件化といってもどのようなケースがあるのかご存知無い方もいるかと思いますので、上でも少し触れた利用者さんによる切りつけ事件のニュース記事を取り上げてみたいと思います。

富津市で「利用者への殺人未遂容疑」で別の利用者を逮捕 

まず1件目が利用者が別の利用者に対して「殺人未遂」を犯したというものです。

千葉県富津市の介護施設で利用者の男性を刺したとして、県警富津署は10日、殺人未遂の疑いで、施設の利用者で自称同市湊の無職、佐竹正一容疑者(72)を逮捕した。調べに対し、容疑を認めているという。

逮捕容疑は、同日午前9時15分ごろ、同市湊の高齢者介護施設で、利用者の男性(75)の首などをナイフで切りつけて殺害しようとしたとしている。男性は首などに切り傷を負う軽傷。同署は2人の間に何らかのトラブルがあったとみて、経緯を詳しく調べている。

引用元:9月10日 産経新聞

 

横浜市旭区で「介護職員と利用者への殺人未遂容疑」で別の利用者を逮捕 

そしてこの2件目は利用者が「介護職と別の利用者」に対して「殺人未遂」を犯したというものです。

入所する介護施設で他の入所者を切り付けて殺害しようとしたとして、旭署は18日、殺人未遂の疑いで、横浜市旭区上白根町、無職の男(84)を現行犯逮捕した。調べに対し、施設の食事量に不満があったとの趣旨の話をする一方、「殺すつもりはなかった」と供述、容疑を否認している。

逮捕容疑は、同日午後0時55分ごろ、入所する介護施設のコミュニティールームで、入所者の無職男性(61)の首を包丁で切り付けて殺害しようとした、としている。男性は首などに約2週間のけがを負った。

署によると、コミュニティールーム近くの台所にあった包丁(刃渡り約15センチ)を持ち出し、施設の女性職員(52)を包丁で切り付けた後、男性を襲ったという。女性職員も顔などにけがを負い、署は女性への殺人未遂容疑でも調べている。

この女性職員が110番通報し、駆け付けた署員が逮捕した。署によると、施設には、認知症を患ったり肢体不自由になったりした男女17人が入所。同容疑者は昨年9月から入所していた。

神奈川新聞  2019年09月18日

 

ポイントは「判断能力のある利用者」がこのような事件を起こしているという事

上記で直近起きた事件についてニュースを引用しましたが、これらの事件のポイントは「判断能力のある利用者がこのような事件を起こしている」という事だと私は考えています。

  • ナイフや包丁は、危険だと判断できる利用者が切りつけている
  • 個人や環境に対しての「明確な怒りや不満」を源に攻撃している

これらの事件については、逮捕された利用者が「行為を認める」「殺人の意思は否定」等とあるように、明確なきっかけや意思が込められた行為であって、混乱状態にある利用者が訳もわからず起こしてしまった事件では無いという事です。

もちろん介護現場もこうしたリスクを回避する為に刃物の管理を厳格にする等の当たり前の対応は必要です。

ただしこれだけ明確な意思を持った行動を起こす事ができる利用者の行為を完全に防ぎきる事は現実的に難しいと言わざるを得ません。

 

「利用者さんも利用者である前に1人の人間である」という事への理解

これらのように明確な利用者の意思が込められた、暴力的行為をどのように受け止めるのかは介護現場にとって非常に大事な事になります。

その中でまず大事にしなければならないのは「利用者さんも利用者である前に一人の人間である」という事を理解しておくことが非常に重要になります。

  • 「利用者さんだから仕方ない」
  • 「お年寄りだから少しくらい暴れられても大丈夫」
  • 「悪気をもって行っているわけではない」

これらのように利用者さんを無条件に「安心できる存在」「守るべき存在」だと決めつけて「相手が利用者さんだから全て行動を行動を許容しなければならない」というのは大きな間違いだという事です。

利用者さんであったとして、1人の人であり、他の人間と同様とに何かきっかけがあった時に、暴力を振るってしまうこと、時には刃物を手にするような事件を起こしてしまう事さえあるという事を理解する必要があります。

 

介護士は自分を守るという考え方ももつべき

上で書いたような「利用者さんであっても凶暴化する事がある」というのは、利用者さんに偏見を持てという事ではなく、本来当たり前の感情ある人間を相手しているという事をしっかり理解しようという事です。

例えば「利用者さんの言うことを全て聞く」という事ではなく、1人の人として「問題のある行動が見られる利用者さんにはサービス利用を控えてもらう」等という事は当然に必要な対応です。

こういう議論をすると、では「問題のある利用者さんは誰が見るんだ」というような議論に派生してしまいがちですが、少なくともそれは適切な環境が用意できていない民間の介護現場ではありません。

それに見合った環境が整えられている病院であったり、行政が管理し施策しなければ、ただ介護現場が疲弊するばかりで、何一つ改善には繋がりません。

逆にこうした割り切りや適切な判断が、多くの利用者さんや介護士に安心した生活環境や労働環境を与えてくれるとも言えます。

介護サービスの果汁の過程では、介護サービスの質が千差万別なのと同様に、利用者さんについても人それぞれ違いが広がりつつあります。

繰り返しになりますが、その全てを十分な環境の整っていない介護現場が過剰に引き受けるのは決して健全な状況だとは言えないのではないでしょうか。