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「福岡県の介護施設で送迎中の利用者死亡事故」悪いのは送迎者?

こんにちは、ごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。

私は、新卒で介護業界に飛び込み11年間介護現場や管理職を経験してきました。
その後、転職コンサルに5年間従事し、現在は介護コンサルをする傍ら、介護現場で介護士としても現場のお手伝いをさせていただいています。

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それでは早速本題です。

介護施設、中でもデイサービスやデイケア等で勤務していると、利用者さんを車に乗せての送迎業務を行う事が日常と化している方も少なくないと思います。

そんな送迎業務について、多くの方は何かしらの「プレッシャーやストレス」を背負って業務に従事されているのではないでしょうか?

私自身も送迎業務の経験がありますが

  • 事故を起こしてはいけないプレッシャー
  • 慣れない道や車を運転するプレッシャー
  • 時間を守らなければならプレッシャー etc

挙げればキリがありませんが、こうしたプレッシャーやストレスを背負って送迎業務を強いられている方も少なくありません。。

そんな中、先日発生してしまったのが、「福岡県のデイケア送迎中における、利用者さん死亡事故」です。

今回はこの事件を交えながら、介護施設における送迎業務の「難しさ」や「負担」について記事にまとめていきたいと思います。

 

「福岡県の介護施設で送迎中の利用者死亡事故」の概要

まず、今回福岡県で発生してしまったデイケアの送迎中における死亡事故についてニュース記事を引用しましたので、ご覧ください。

福岡県のデイケア送迎中に利用者死亡事故が発生

13日夕方、福岡県行橋市の市道で、デイケア施設の送迎用の乗用車が道路脇の電柱に衝突し、後部座席に乗っていた90歳代と80歳代の女性が胸を強く打つなどして死亡しました。
警察は、運転していた20歳のアルバイトの運転手を過失運転致死の疑いで逮捕しました。

警察によりますと、13日午後4時20分ごろ、福岡県行橋市流末の市道で、デイケア施設に高齢者を送迎するための乗用車が道路の左脇の電柱に衝突しました。

この事故で、車の後部座席に乗っていた90歳代と80歳代の女性が胸を強く打つなどして病院に運ばれましたが、まもなく死亡が確認されました。

車にはもう1人、高齢の女性が乗っていて病院に運ばれ手当てを受けていますが、詳しい容体はわかっていないということです。

警察は車を運転していた北九州市小倉北区のアルバイト、黒瀬涼斗容疑者(20)を過失運転致死の疑いでその場で逮捕しました。

調べに対し、黒瀬容疑者は「運転中に脇見をしていた」と供述しているということです。

現場は見通しのよいほぼ直線の道路で、車は道路左脇の電柱にぶつかってフロントの中央付近が大きくへこんでいたということで、警察は当時の詳しい状況を調べています。

(引用元)2019年9月13日 NHK 北九州 NEWS WEB より

 

このような事故については、同じ介護業界に従事していれば他人事とは言えません。

そして送迎中のみならず、こうした介護現場で起きる事故そのものを「完全にゼロにする」という事は現実的には不可能です。

だからこそ、今回のような事故についても、背景が見えない中で100%送迎者を責める事はできません。

ただしそれでも今回のニュース内容を見て個人的に感じた事、それは「もう少し危機意識を持つべきだったのではないか?」というところです。

 

送迎車の事故は防ぐ事はできないのか?

上でも書いた通り、どれだけ慎重に運転したところで、送迎中や介護中の事故をゼロにする事は事実上不可能です。

ただし、ゼロに近づける為の努力や準備は、介護事業の運営法人として介護士して必要なのは言うまでもありません。

そうした意味で「今回はリスクに配慮した対応がなされたいたのか?」について、少し掘り下げて考えてみたいと思います。

「脇見をしていた」は、正しく運転業務のリスクを理解できていたと言えるのか?

まず私自身が一番に疑問に感じたのは「脇見をしていた」というところです。

事故記事によると事故があったのは「見通しの良い直線道路」でかつ「事故車のフロントの中央部が大きくへこんでいた」とあります。

今回の事故の周辺環境や破損箇所を考えると「一瞬の脇見」ではなく、「それなりの時間目をそらしていた」という事が予想されます。
要は、運転に集中できていなかった可能性があります。

全ては結果論ですし、その場面にいたわけでない私自身の想像の範疇を超えるものではありませんが、「利用者さんを乗せている」「人の命を預かっている」という責任感や重み、そして送迎業務のリスクという感覚が少なからず欠如していたのではないか?と感じずにはいられません。

 

「20歳のアルバイトの運転」は適切だったのか?

このように送迎業務に対しての危機意識について、若干の疑問符がつく今回の事件ですが、それに加え今回の運転者が20歳のアルバイト職員であった事も若干気になった点にはなります。

「アルバイトだから」「若いから」という事に偏見を持ちたいわけではありません。

  • 20歳と言えば、どれだけ長くても免許取得からは2年程度、本当に送迎業務に見合った運転スキルや経験があったのか?
  • アルバイト社員に対して、正社員と同様の危機意識を持たせる事ができていたのか?

もちろん表面的な情報だけで読み取れない部分も多分にはありますが、決してベストな運転スキルやマインドを持ち合わせた送迎者のチョイスだったとは考えづらいところです。

そうした意味ではこの20歳のアルバイト男性に送迎業務を委ねるという判断をした運営法人側の危機意識についても疑問符がつきます。

 

一方で介護士並びに運転手不足に悩む介護施設も多い

ただしその一方で上で書いたような、送迎者の人選に関しては、あくまでも「あるべき姿」を前提とした意見でもあります。

実際のところ、介護現場ではそうもいかない実態が溢れていたりもするものです。

  • 送迎者と介護者が兼務状態で、疲れ切った中での送迎が行われている
  • 専任のドライバーを雇いたくても雇えるだけの資金的な余裕が無い
  • そもそも介護士にしてもドライバーにしても、人を採用したくても応募がなく採用できない etc

これらのように送迎の体制をしっかり整えたくとも、それが実現し難い環境が多くの介護事業所の背景にはあると言えます。

 

運営法人の危機意識を疑う場面も少なくない

また環境を整えられないというだけでなく、運営法人自体の送迎業務に対したリスク管理が甘い事も根本にはあります。

介護現場で送迎を巡っては下記のようなコミュニケーションを耳にする事も少なくありません。

  • 「人が足りないんだからやってね!」
  • 「免許持ってる他の人はみんな送迎してるんだから!」
  • 「時間がないから急いで!」

これらのような「人手が足りない」「時間が無い」等の「余裕が無い状況下」で、余裕がないまま現場職員に送迎業務を無理強いしているような法人も少なくないのが実態です。

本来は、リスクが高く安全な送迎が成り立たないのであれば、引き受けるサービスを制限するという事が経営判断として当たり前に必要です。

しかしながらそうした当たり前の経営判断が行われずに、もしくは当たり前の人的投資や環境整備が行われずに、しわ寄せが送迎者のみに降りかかるのは理不尽極まりありません。

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今回の事故を受けた世間の声

また今回の事故を受けては、介護関係者ならびに世間からも事件を問題視した、様々な意見が飛び交っています。

以下、参考となる世間の声を拾い集めてみました。

  • バイトをドライバーにしたのは人選のミスと言わざるを得ない。
    利用者さんを同乗だせている中で、脇見運転をしてしまうところに責任感の希薄さをかんじる。
  • 自分もデイで送迎業務に関わるが送迎には神経を使う。
    慣れない道、細い道での運転へのストレスやルート設計も効率的に行わないと、時間の遅れがご家族からのクレームにもなり大変。
  • 専業の運転手を配置するべきだと思いますが、私の働いているデイなどでも職員がギリギリで結局介護職が送迎までを熟しています。
    ただいくらなんでも20歳のアルバイトの子に送迎車を運転させる事には疑問を感じる。
  • 介護士も疲弊しながら、何とか現場の業務と送迎業務を兼務している状態。
    運転手だけを責めたところで、問題は解決しないと思う。
  • 介護業界に詳しくないですけど、人手不足でかつ給料も安いから人を選べないところもあるのではないでしょうか?
    行き届いたサービスを受けたいのであればそれに見合う金額が必要だと思います。
  • 仕事として人を乗せて運転する人は、最低二種免許の拾得者にすべきです。運転歴3年以内の初心者に任す方に責任があります。最近高齢者の運転ミスをマスメディアが、執拗に指摘していますが、タクシーの運転手などは、多くが70歳以上ですが、みなさん上手ですよ。

世間でも介護現場の実情に一定の理解を示す声もありながらも、今回の事故そのものが起きた原因は事業所側ないしは送迎者自身にあるというのが大半のところです。

 

介護施設での送迎ストレス・負担についてはもう一度考えておくべき

今回は福岡での事故を皮切りに、介護現場の送迎業務について記事を書いてきましたがいかがでしょうか?

まず大前提に考えておくべき事は、「介護士は大変な中送迎を兼務している、だから事故は仕方ない」と言ったところで多くの人は納得はしてくれません。

そして事故が起きるリスクは理解されたとしても、人の命を預かっている以上「仕方ない」が通じないのが実情です。
ただ現実的な問題として「事故をゼロにする事」は不可能。

だからこそ大事な事はそうした状況下で、どのように事故リスクを最低限に低減できるかを運営法人や介護現場は検討し、準備するということです。

  • 専任ドライバーの雇用を検討する
  • 免許取得間もない人間、運転に不安のある人間に無理に送迎業務をさせない
  • 送迎スケジュールに時間的余裕を持てるように調整をする
  • 送迎中の事故リスクについて、研修や危機管理を行う etc

これらはあくまでも基本的な例に過ぎませんが、こうした対策を検討するとともに、何よりも運営法人そのものがこの事故リスクについてしっかりと留意する必要がります。

上でも触れたように当然のように「人が足りないんだからやって!」「他の人もやっているんだから!」「時間がないから急いで!」等と、送迎のリスクを認識しているのか疑いたくなるような介護施設が存在するのも事実です。

だからこそ、経営判断として「やらなければならないからやる」ではなく「できる事を判断してやる」という思考でサービス展開が進められなければ、介護職は安心して勤務する事ができません。

そして介護職が安心して働けない職場では、事故のリスクが上がり、介護職の定着も進みません。

結局こうした対応がとれない介護施設は負のスパイラルに陥ってしまうわけです。

こうした当たり前の現象が当たり前に理解され、遂行されていく必要があると思います。