最近、いや以前より介護現場やSNSを見ていても、「崩壊した介護現場」を目にする事が少なくありません。残念な話ではありますが。
私自身多くの介護現場に足を運ばせていただき、正直なところ「その環境下でよく頑張れるな…」と思うような事例も少なくありません。
それでも「利用者さんがいるので・・・」「前までは良い職場だったんで、よくなる思うので・・・」等と言いながら、我慢して耐え忍ぶ現場の介護職のみなさんが後を絶ちません。
でも限りある時間を「我慢」の積み重ねで過ごす事が本当に良いことなんでしょうか?
よく退職の相談をすると「逃げちゃダメ!」なんて言う人がいますが、私は逆に時には「いや、逃げなきゃダメでしょ!」とお伝えしています。
その思いをブログにさせていただきます。
「退職」は「無責任」?
先日も保育業界で、「保育士さんの集団退職問題」がニュースで取り上げられていましたね。
詳細は割愛させていただきますが、世田谷区の企業主導型保育園で18名の職員が集団退職したというものです。
事の発端については、様々な噂が飛び交っていますが「給与の未払い等含めて、経営側と現場側での大きな確執があった」と言われています。
この報道を受けて一部のメディアでは、退職した職員に対して「保育士にも関わらず無責任だ!」「残された子ども達はどうなるんだ!」と非難の声が浴びせられていますね。
ただ本当に給与未払い等の事実があったのであれば、経営サイドに問題の矛先が向けられる事は当然にしても、肝心の職員の退職自体は致し方ない事だと思いますし、そこの責任を職員に求めるのはお門違いだと考えています。
退職された保育士さんも退職が本意では無かったと思いますし、自分の身を守る為に退職という選択を取られただけの事ではないでしょうか。
それを保育士であるが故に自分の事は我慢し続け「園児を置いて逃げちゃダメ」なんて考えが蔓延しては、誰も保育士になろうとしません。
もちろん「集団で退職する以外の選択肢は無かったのかな?」という疑問はありますし、もし他の術があったとするなら残念ではありますが。
ただ少なくとも「保育士さんの退職」と「園児を蔑ろにしている」という判断は別問題だと思っています。
今回はたまたま保育業界でも事例ですが、当然介護業界でも同様のケースがよくありますよね。
こうした考えでいけば、現場の職員は「お客様(=利用者さん)」を人質に取られているようなものです。そんな論理が成り立つわけないですよね。
自分を大事にする事(=退職すること)が無責任だとは到底私には言えません。
「我慢する事」がサービスの質の悪化にも
退職が無責任だとは到底言えないと書きましたが、それこそ退職に至らずとも「介護職の我慢する環境」がサービスの質を劣化させる事は往々にしてあります。
先日「10年後に笑える介護施設」という事で記事を書きましたが、その中でも書いた通り、間違った事やおかしな事がまかり通る職場に未来はありません。
こちらをご覧いただくとわかりますが、「自分を追い込みながら努力する事こそサービス業の鏡だ」というような考え方が大きな勘違いだとかわかってもらえると思います。
「現場を正す事が大事で、正されない職場は職員が去る」この構図が業界に浸透し、今後の介護業界が淘汰されていかなければなりません。
よく言いますが、自分自身に余裕のない人間が他人(=利用者さん)に余裕を持った関わりをできるはずもありません。
そして余裕のない関わりが利用者さんにとって良いサービスを生むはずもありません。
「自分の気持ちや余裕の無さがサービスの低下に繋がるのは、専門職として失格だ」等という人もいますが、それこそキレイ事です。
人の心情がサービスの質に一定の影響を与える事は明確です。
だからこそ、その余裕を持つための働きかけが受け入れられず、環境改善が見えないならむしろ辞めるべきです。
サービスを受ける利用者さんが、利用するサービスを選ぶのと同様に、労働を提供する介護職も職場を選べば良いだけのことです。
そうした当たり前の文化が介護業で浸透しない限り、根性論や気合論で何とかなる世界だとする今の現状は変わりません。
最後に
いかがでしたでしょうか。「逃げちゃダメ、いや逃げなきゃダメでしょ」の意味がお読みいただいた方に伝わっていると幸いです。
「退職」を「逃げ」という言葉で表現する事自体不本意ではありますが、明らかに不当な環境下で我慢をして勤務をしたところで、それは何も生みません。
「徹底的に経営側と戦う」という選択を取らない限り、「我慢」の延長線上に未来はありません。
限りある時間を本来不要な「我慢」に費やすことが、どれだけ無駄なことなのか、そして結果は未来に何も生まないという事を今一度ご理解いただきたいです。
何度も言う通り、利用者さんを蔑ろにする事と不当な労働環境が故に退職する事は全くの別問題です。
「無責任」という必要のない責任感にかられては、何も改善しようとしない経営者や労働環境の思うがままです。
極端な言い方をすれば、おかしな職場からは退職することが、長い目でみれば介護業界にのためになるとも言えます。
そうでなければ間違った運営をする介護施設が生き延びてしまいますからね。
誰のための、何のための仕事なのか。最終的には個人の価値観に委ねられますが、ぜひ自分自身を大事にしていただければと思います。
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