こんにちは「介護コンサルをしながら、現役介護士を両立」がモットーのごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。
先日、介護現場で活躍する「介護士の年齢層」について、少し驚きのニュースが舞い込んできました。
介護士の平均年齢は44.8歳で、20代が占める割合は10.9%であることが22日、全労連の調査で分かった。また正規介護職の平均賃金月額は約22万6千円で、全産業平均より大幅に低く、時間外労働があると答えた人のうち25.0%がサービス残業していることも判明した。
(出典:一般社団法人共同通信社)
介護業界といえば「若者が少ない」「年配者が多く活躍している」というイメージはもっていました。
ただここまでの若者比率の低さには少々驚きました。
それだけ今の介護業界には、若手介護士が希少価値の高い存在となっています。
そこで今回は
「なぜこのような自体に陥っているのか?」
「若手介護士が少ない事は問題なのか?」
この辺りについて、掘り下げて考えてみたいと思います。
「20代の介護士割合10.9%」の実態
まず、今回の全国労働組合総連合の調査については、詳細をコチラでご確認いただけますので、興味のある方はご覧ください。
今回の介護従事者の調査については「施設介護」「訪問介護」に分けて報告されていましたので、それぞれを切り分けてみていきたいと思います。
「施設介護」の職員構成
まず先程の「20代の割合が10.9%」だとする調査結果については、この施設介護部門での話となります。
(介護従事者の内訳)
■男女比
・男性:24.7% ・女性:74.1%
■年齢層の内訳
・10 代 0.4% ・20 代 10.9%
・30 代 23.8% ・40 代 28.0%
・50 代 24.6% ・60 代 11.5%
・70 代 0.9%
※平均年齢:44.8歳
こちらを見てもらうとわかる通り、いかに介護業界が「40代、50代の年配層」に、さらに言えばの「女性」に支えられて成り立っているのかが見て取れます。。
「訪問介護」の職員構成
また年配層の介護士比率の高さについては「訪問介護」に絞るとより顕著な結果となります。
(介護従事者の内訳)
■雇用形態
・正規:20.4% ・パート:22.1%
・登録:51.7%
■年齢層の内訳
・10 代 0.0% ・20 代 1.0%
・30 代 5.9% ・40 代 20.2%
・50 代 35.3% ・60 代 30.2%
・70 代 7.5%
※平均年齢:55.5歳
こちらを見てもらうとわかる通り、訪問介護にスポットを当てると、もはや20代は1%。
平均年齢が55.5歳で、50歳以上の介護士が73%、60歳以上に絞っても51%と介護士の超高齢化が浸透している事が見て取れます。
「若手介護士がいない」は、ある意味必然
ではなぜ介護業界では、若手介護士の拡充が進まないのか?
この点についても掘り下げて考えてみたいと思います。
「介護士でなければならない理由」が無い
まず、一番に思い浮かぶ事は今の若者は「仕事を選ぶ」という事が比較的容易にある中で「介護士でなければならない理由が無い」という事です。
今の御時世人手不足は介護業界に限った話ではありません。
「AI」「外国人労働者」等々、将来的に日本人労働者を必要とする業界が少なくなるという声も聞きますが、少なくとも現状は、そうした声と実態は大きな乖離があります。
高止まりしている有効求人倍率を見てもわかると思います。
そんな「仕事を選ぶ時代」であるにも関わらず、介護業界を賑わす話題はネガティブな要素で包まれてしまっています。
今回の調査からも読み取れますが「給与問題」「労働環境問題」「人間関係」、こうした問題を抱える業界に対して、仕事を選び易い環境にある若者労働者が興味を示さないというのは、ある種必然と言えるのかも知れません。
介護士は若者にとって「今しかできない仕事」では無い
また若者介護士が増えない要素の一つとして「今しかできない仕事では無い」という点も一つ大きなポイントかもしれません。
今回の調査についてもどう見るかという事です。
「介護業界は、若者がチャレンジしたい業界とは言えない」
と言える一方で
「中高年者であっても活躍しやすい業界と言える」
言い換えれば
「今しなくて将来チャレンジできる業界と言える」
このように介護業界自体のこうした特性が、若手が敢えて介護を選ぶ必要はないという思考を後押ししているのかもしれません。
「若手がいない」のが問題ではなく、現場の人間関係構築が大事
このように「若手の少ない介護業界」ですが、私自身はこの「若手が少ない」という事実そのものについては、大きな問題だとは捉えてはいません。
「若手介護士」は必ずしも必要ではない
介護施設にも必ずしも「若者」が必要かと言えば、必ずしもそうではありませんが、若手がいる事によるメリットはあるかも知れません。
・「活気」が生まれやすい
・「体力」があり、単純に熟せる業務幅も広い
・「流行」に敏感で、AI等のツール導入が進みやすい
ただし、これらは必ずしも「若手しか持ち合わせていないもの」ではなく、逆に言えば若手が必ずしも必要とは言えません。
「若手介護士」の有無から見えること
上でも書いた通り「若手介護士が少ない」という事自体に問題はありません。
ただし、私が多くの介護施設にお伺いする中で感じる事が一点あります。
「若手介護士の多い介護士施設の方が人間関係が良好な傾向にある」
というものです。
私の思い込みや偏見もあるかもしれませんが、「いじめ」「嫌がらせ」に積極参加する人は中年~年配者に多いと感じる場面を良く見受けます。
そして20代等の若者がその潤滑油になっているようなケースを見かける事も少なくありません。
そうした人間関係構築の為の若手の役割は、目に見えづらい部分ですが、意外に大事なもののようにも感じます。
最後に
介護現場に若手が少ない事は、何も今に始まった事ではありません。
更に言えば、記事内でも書いた通り、若手介護士が介護現場に必ずしも必要とは言えません。
ただし、若手介護士の有無が職場の人間関係構築に影響を与える事があるのも事実です。
そうした意味では若手を積極的に採用する為の採用強化は必要かも知れません。
そして何よりも「仕事を選べる」立場にある若者が少しでも「介護士」を選びたくなるような環境構築が進められなければ、これからの介護士不足には対抗できません。
「仕事を選べない人」「消去法で選んだ人」が介護業界に飛び込む事が一概に問題だとは言えませんが、やはり介護業界の活性化が進まない要因の一つになりかねません。
「若者が必要かどうか」ではなく「若者でも選びたくなる」そんな介護業界になって欲しいものだと願います。