こんにちは、ごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。
常々問題視される介護業界での介護士不足。
例えば、
・介護士(チャンレンジしたい人)が増えない
・介護士が増えても離職率が高く定着しない 等々
一言に介護士不足とはいっても様々な課題があふれる介護業界。
どれも重要な課題ではありますが、その中でもまずは「離職率高さ」を解決しないことには未来が無いと思っています。
シンプルな話です、どれだけ国が介護業界のポジティブキャンペーンをした介護士を志す人が増えたとしても、離職率の高い現場に入ってしまえば、「穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの」です。
今回はこの「離職率の高さ」の原因となる「介護士の退職理由」をランキング化して見ていきたいと思います。
※本記事は、厚生労働省調査の「直前の介護の仕事を辞めた理由」を元にランキング化しています。
第1位「人間関係」 支持率:24.7%
堂々のトップは、やはりと言って良いでしょう「人間関係」。
これには多くの方が納得いただけるのではないでしょうか?
介護士の仕事は1人で業務完結するというよりは、上司や同僚と日々協力し合い、チームプレーでの仕事連携が重視されます。
要は、「嫌でも人と関わらなければ成立しないのが介護士の仕事」です。
それにも関わらず、介護の現場ではいわゆる「お局様」と言われる古株介護士を筆頭に、人間関係をかき乱す人達が存在します。
部下や同僚に対しての露骨なイジメはもちろん論外ですが、イジメとまでは言えなくても「ちょっとした意地悪」や「雑なコミュニケーション」等、現場では人間関係に頭を抱える介護士が後を絶ちません。
「介護士」=「思いやりがある」=「円満な人間関係」というのは、都合の良い解釈でもはや都市伝説かもしれません。
第2位「運営のあり方への不満」 支持率:23.3%
第2位は「運営のあり方への不満」という事でした。
「経営陣・管理職」VS「現場介護士」
思い当たる介護士のみなさんも多いのではないでしょうか?
・「介護現場」と「運営・経営サイド」の価値観の差異(認識のギャップ)
・「経営(収支)重視」の運営・管理サイドと「介護現場重視」の介護士サイドの衝突
・現場を蔑ろにした管理者や上司の発言や考え 等々
本来運営サイドにとって一番大事な事は、現場に目を向け、現場を正しいモチベーションで機能させる事です。
それができて初めて、初めてサービスの改善や効率化が可能となり、その結果として売上や顧客満足がついてきます。
しかしながら多くの法人は、目の前の結果を急いで求めるが故に、現場に無理難題を振り掛けが、介護士のモチベーションを阻害してしまいがちです。
それでは介護士からは不満しか生まれませんし、うまくいくものもうまくいきません。
「現場介護士」VS「現場介護士」
また介護現場の運営の在り方への不満という意味では、もう一つ問題の理由があると思っています。
それは現場レベルでの「介護の進め方」での衝突です。
良くも悪くも介護の現場においては、「必ずこれが正解」と言い切れない場面が多々存在します。
例えば「利用者さんの為に」という同じ志を持って介護であったとしても
・「自立を促すため可能な限り利用者さん自身に自分のことをやってもらうのか」
・「時間の兼合いやサービス精神のもと介護職が積極的に補助をするのか」等々
このあたりは、法人や個人によって見解が分かれるところです。
こうした価値観や考え方のギャップも不満の一因となっているのではないでしょうか。
第3位「他に良い仕事・職場があった」 支持率:18.6%
「もっと良い仕事や職場があったので転職します。」
これは介護業界に関わらず、終身雇用が死語になりつつある近年においては当然の選択肢かもしれません。
1箇所の職場で長期的に勤務する事で得られるもの多々あるかと思いますが、「自分がより活躍できる職場」「自分をより評価してくれる職場」に身を置こうとするのは、私個人としても大事なことだと思います。
むしろ何も考えずただ長期的に働くよりも、前向きな選択とも言えるかもしれません。
もちろん中には前向きなものばかりでなく。「今の職場に不満があるから、他が良く見える」という要素も多分に含まれていると思います。
このあたりのにネガティブ要素は、この数字上では判断できませんので割愛します。
第4位「収入が少なかった」 支持率:17.6%
「ようやく?」と言って良いのかもしれません「介護士の収入問題」。
ここに関しては、常に声が上げられており、世に最も浸透しているわかりやすい課題ですね。
ただ勘違いしてもらいたくないのは「4位だから介護士の給与問題の優先順位は低い」ということではありません。
基本的には、退職理由は「入社前と入社後」のギャップから生まれるものです。
その為、「給与の低さを覚悟して仕事を始めている介護士が多い」というだけで、「給与に満足している介護士が多い」という事ではありません。
そしてもちろん、国もこうした状況を受けて運営法人に対して積極的な処遇改善を促しています。
結果、少しづつではありますが、介護業界全体の平均年収は上がりつつありますし、それ自体は非常に良い事だと思います。
世間でも様々な収入調査が行われていますが、専門家の間でも「他産業に比べ月収が10万円以上低いというデータ」もあれば、あくまでも成長途中の業界であるため、「決して低くないといった見解」まで、介護士の給与には見解が飛び交っています。
間違いなく言える事は、「多くの介護士が収入に満足はしていない」という事だけです。
第5位「将来の見込みが立たなかった」 支持率:15.1%
個人的にはこれが一番残念で、切ない問題です。
「将来の見込みが立たない」というのは一言で言えば「絶望」…
「人間関係の問題」「業界や職場への不安」「給与への不安」もろもろの課題と向き合った結果「将来の見込が立たなかった」と判断されたわけですから。
今の山積みの介護業界が解決されなければ「将来の見込みが立たない」という声は膨らむ一方です。
最近では、国が介護業界の課題にスポットを当てる事は少しづつ増えていますが、その一方で、光が指すような具体的な打ち手が講じられるには至っていません。
各現場単位での打ち手も大事ですが、やはり今後の介護業界の為には、国を始めとした業界全体の打ち手は必須だという事を物語る結果と言えます。
「介護士の退職理由ランキング」のまとめ
今回は5位までのランキングについて、スポットを当てましたが、いかがでしたでしょうか?
調査結果を改めて見て思うことは、やはりどこの介護現場にでも同じような課題があるものなんだなということです。
私自身の現場経験やコンサルタント経験を振り返っても身に覚えのある内容ばかりです。
言い換えるとこれらの課題は職場単位の課題ではなく、介護業界としての受け止めるべき課題です。
その事を十分に認識し、まずは業界自体の希少性や価値が高め、介護業界で働く法人や人の程度を底上げしなければなりません。
その為も「魅力的な給与が必要なのか?」「他を圧倒するやりがいが必要なのか?」「働きやすい職場環境が必要なのか?」答えは一つではないように思います。
ただ、切り口がどこであれ業界の風向きが変われば、相乗効果で業界は上向きます。
介護現場の人間が今以上に現状を悲観する前に、そうした風向きの変化を期待したいところです。
「完璧な業界なんてものは無い」ことは承知の上ですが、少しでも介護業界が働きやすい業界になって欲しいと願うばかりです。