現場リアル

【介護福祉士養成校の実態】充足率44.2%の危機的状況

みなさんの職場には、介護福祉士の養成校を卒業して、新卒入社した新人さんはいらっしゃいますか?

私自身、数年前は「新卒も増えてきて、しかしたらこれから介護業界は盛り上がるかも?」なんて思っている時期がありました。

ところが、ここ数年介護施設を回っていても、やはり新卒をはじめとした若手の盛り上がりにはかけるなぁと...

「なかなか養成校もうまくいってはないんだろう」とは、思いつつ介護福祉士の養成校の状況について一度しっかり情報を集めてみましたので、ブログにさせていただきます。

介護福祉士養成校の充足率、まさかの44.2%

①介護福祉士養成校の入学人数推移

今年(2018年度)介護福祉士を育てる専門学校や大学などの養成校に入学した人は僅か6,856人。

この数字、昨年度と比較するとマイナス402人となっており、過去最低水準です。

ちなみに2010年には、15,771人の入学生がいたので、その頃と比較すると60%近くの減少になります。

増やさないといけないといっている最中、起きている実態は正に逆行ですね。
 

②介護福祉士養成校の推移

2018年時点の介護福祉士養成校(過程数)は全国で386校と昨年度比でマイナス10校。

同様に定員数も2010年には20,842人だったものが、2018年には15,506人にまで減少しており、充足率は実に44.2%という崩壊水準です。

基本的には生徒がなかなか集まらないこと等を理由に、募集をやめたり過程を廃止したりという学校が増加の一途です。

この危機的状況が、この右肩下がりのグラフ推移をご覧いただくとよくわかると思います。(日本介護福祉士養成施設協会のまとめより)

 

一方で外国人留学生は増加傾向

「入学者数」「学校数」「定員数」と全ての数字が減少傾向にある介護福祉士養成校の指標において、実は一点だけ増加傾向を示している指標があります。

それが「外国人留学生の入学数」です。

2017年591人だった外国人留学生が、2018年は1,142人と数字こそ小さいものの、この1年で2倍に急増しています。

入学生全体に占める割合もこの1年で8.1%%から16.6%まで大きく上昇しています。

ちなみに留学生の人数を国籍別にみると、最も多いのはベトナムで542人、それ以下、中国が167人、ネパールが95人人、インドネシアが70人とアジア圏の国々が続いています。

上位国に大きな顔ぶれの変化はありませんが、実はインドやスリランカ、モンゴル、カンボジアなどの留学生が増える等、水面下では留学生の多様化が一段と進んでいる事が伺えます。

逆に言うと日本人の入学生の減少幅がそれだけ大きいことも意味しているわけですので、複雑なとこではありますね。

やはりこれからの介護業界は外国人労働者の力を多分に借りる必要があると言うことでしょうか。

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介護福祉士養成校の苦戦理由

そもそもの話、日本は少子化影響で、介護分野問わず学生の確保に苦戦してる専門学校や大学が多々存在します。

ただそれでもなお、介護福祉士養成校の人気が上がらない理由は何なのか、それは一重に「介護職の人気の無さと同義」と捉えて問題ないと思います。

このブログでも散々書いている通り、介護業界に対しての「給与が低い」「きつい」「人間関係が悪い」等のイメージそのものを表していると言って良いでしょう。

学生が抱くイメージと現実のギャップがどの程度あるのかまでは、推し量ることができませんが。。。

ただ業界の成長を考えた時に、こうした養成校を卒業した若者増えないという状況は、非常に大きな問題だと個人的には思っています。

ただ時間をかけて学べば良いというわけではありませんが、本来は専門的な技術や知識を体系的にきっちりと教えるのが養成校の役目であり、そうした技術や知識を持った卒業生が現場で力を発揮し、マネジメント能力を身につける事で業界の底上げにもなります。

更にはそうした新卒が管理職に上り詰めるというようなキャリアイメージが出来上がる事で、新たに介護業界に興味を持つ方も増えると思われます。

現状の現場で中心として活躍しているいわゆる中途採用者の「異業種経験ならではの経験や発想」と「養成校を卒業したような介護業界での一本での技術や知識」といったような相互シナジーが期待できてこそ、より介護業界は盛り上がります。

それこそ語弊を恐れず言うならば、20歳の介護職が1名増えれば60歳で退職しても40年間介護職として活躍できます。

逆に50歳の介護職が1名増えても60歳まで10年間しか介護職として活躍できません。

単純に年齢だけで比較することは不謹慎ですし、これだけ全てが測れるとは思っていませんが、やはり新卒を中心とした若者が介護業界に入ってきてくれる事がいかに価値が有る事かはわかると思います。

そのためにも介護職の処遇改善には引き続き注力しつつ、養成校に通う学生に対する支援も根本から強化する事が必要になります。

それを考えた時に今の既存補助制度では不十分ですし、極端な話、自己負担をせずとも卒業できるくらいまで補助を拡張して良いのではと個人的には思っています。

最後に

いかがでしょうか、ここまで書いた通り介護職の不足はもちろんながら、水面下での新卒介護士の減少という大きな課題を介護業界は抱えています。

特に新卒増加に関しては、「業界のイメージを変える」というような流暢な事は言ってられず、まずは具体的な補助制度を整え物理的に興味を持たせるべきだと思っています。

そして補助制度を活用して養成校を卒業した新卒介護士が、現場に入り成功体験を生み出し、後進を育てるというような事が必要ではないでしょうか。

もちろんその為には、常に言っている現場環境の改善を同時に進めておく必要はあります。

言うは易しで非常にハードルの高い課題ではあります。

ただし、取り組まなければジリ貧になってしまう事も目に見えています。

もし若者からの好循環を生み出す事ができれば介護業界が一気に活性化するというのも夢ではないかもしれませんね。期待したいところです。