現場リアル

【介護士を大切に】守るべき人は時に「利用者さん」ではなく「介護士」です

介護現場で日々起こる様々なトラブルや問題。

人が人をケアするという環境において、何も問題なく思い通り事が運ぶという事はもはや虫のいい話なのかもしれません。

でもそれを差し引いても、今の介護業界において、大きく欠落してしまっている思うことがあります。

それは「介護士(職員)を守る」という管理職や経営者、そして世間の考えです。

最近SNS上や本ブロブ記事を通じても、介護士のみなさんが自分たちに対しての法人や上司の対応、そして世間の目に対して、大きな不満やストレスを抱えている事が伺えます。

介護施設において支援を必要とされる利用者さんが守られる存在であるのは言うまでもありません。

ただし時に理不尽な事が起きる介護現場では、介護士自身が守られる存在に成り得るという事をこの記事でお伝えできればと思います。

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介護施設での過度な期待は禁物

これは常々このブログ内でも触れていることですが、「介護施設は安心安全な場所だから、ケガや病気をする事は無い」という誤ったが世間の一部、時には施設内にも染み付いてしまっています。 

もちろん介護施設において、「安心安全」というものは最低限守れられるべきもので、そこに対しての対策や準備をする必要があるのは言うまでもありません。

ただしそれでもケガや病気をする事はあるわけです。

誰にでも言える事ですが、「風邪を引かないように」「ケガをしないように」と自分自身やご家族を守ろうと試みたところで、これらのリスクをゼロにする事は不可能です。

それが肉体的にも体力的にも衰えつつある、介護施設でのご利用者さんとなれば尚更です。

どれだけ注意を払っていても利用者さんが転倒しケガをされる事があります。

どれだけ注意を払っていても利用者さんが感染症や風邪に罹る事があります。

「介護施設は安心安全な生活を目指す場所」ではあるものの、「介護施設は安心安全の生活を保証する場所」ではないという事です。

それでもそうした現実を見ることができずに過度に介護現場に対して期待する風潮が世の中には存在します。

現場介護士のストレスや不満

こうした過度な期待は介護現場で勤務する介護士に過度なストレスや不満をもたらします。

どうしても防ぎようななかったものに対して、責任を負わされ責め立てられる事を考えてみてください。

そして責任の取りようが無いものに対して、責任を求められる事で介護士は潰れていきます。

ただでさえ一部の介護現場では、「利用者さんからの暴力暴言」「職員間の嫌がらせ」「人手不足の中での疲弊」等、様々な負担が強いられます。

そこに現実を度外視した期待がのしかかることで、今の介護士はストレス耐性が無ければ難しい仕事になりつつあります。

大事なこと「応援」「同調」では無く「守ること」

こうした肉体的にも精神的にも不満やストレスが溜まりやすい介護現場において、一番大事な事は時には正しく「介護士を守る」という事です。

ただし介護業界では「職員を守る」という部分を勘違いした上司が、こうしたストレスやトラブルを「応援」「同調」で乗り切ろうとする傾向が見られます。

利用者さんからの暴力でケガをした介護士に対して

「大丈夫だった?私なんて、この前噛みつかれて大変だったよ」と噛まれたアザを見せてなぜか満足気の上司

「利用者さんは支援を必要とされる立場の人なんだから、しっかり受け止めてあげてね」とあくまでも利用者さん保護を重視の上司

「いろいろあるけど頑張ろうね!」と応援だけはする上司

様々な対応があると思います。

確かに介護士の対応で、利用者さんが落ち着いたり不安定になったりと、介護士の立ち振る舞いが利用者の暴力の引き金になることもありますし、暴力を軽減させる為の対策も時には必要です。

でもここで大事な事は、「従業員が傷つけられている」という事実です。

こうした状況下では、暴力を受け入れ我慢させるのではなく、本来は「介護士(職員)を守る」という事が求められるのではないでしょうか?

暴力の原因を見極めつつ、利用者さん自身やご家族を巻き込んだ上で、介護現場としても困っている点についてしっかり話し合い、今後引き続き介護施設でケアが継続できるのか?

酷いものなのであれば、警察への届け出は不要なのか?

こうした目線での対応や立ち振舞が上司には間違いなく必要です。

感覚がマヒしている介護現場

ただしこうした当たり前にあるべき感覚が当たり前に持つ事ができていないのが今の介護現場の多くです。

利用者さんの暴力は仕方ないもの、人間関係が悪く嫌がらせも当然なもの、等々。

福祉の精神という名のもとに「過度な利用者さん保護に走ってはいませんでしょうか?」

もちろん介護士に明確な落ち度や原因があるのであれば、その点を正し「叱る」という事も大事なことです。

でもそこは利用者さんに対しても同様でなければなりません。

利用者さんに問題があるのであれば追求をすることが必要です。

利用者さん保護だけが介護施設での上司としての仕事ではありませn。

ただ応援や同調をするだけでなく従業員を守る事。これは本来当たり前の事です。

最後に

ここまで書いてきたように介護施設において、よく言われる「人間関係の悪さ」「ハードな仕事内容」「悪い待遇」これらは確かに介護業界において大きな問題です。

でもそれと同様に「利用者さんへの過度な保護意識」故に蔑ろにされる介護職を守るという考えが欠落しているのは大きな問題です。

介護施設自体も介護職に選ばれる時代になっているにも関わらず、こうした問題が起きるのは、介護業界における管理職の程度の低さを物語ってしまっているのかもしれません。

またそうした環境下でも我慢して働くという選択を取れる介護士の人の良さが現れているのかもしれません。

いつも言いますが、誰のための仕事なのか?

まず仕事は自分の為のものであるべきだと思いますし、自分のためにやった結果が利用者さんの為になれば良いというだけの事です。

それが利用者さん優位の結果、職員の我慢の上にしか成り立たないものになっては元も子もありません。

そして管理職の方にはこうした本来は当たり前の考えをしっかりと持ち「現場の介護職を応援したり同調したりすることでごまかさずに、時には職員を守り正しい改善へと繋がていただきたい」と思います。

それが今後介護施設が正しい職場として生き残る事ができる為の最低限の条件だと思います。

そして、そうした発想、考えが介護業界に浸透しない限りただでさえ、担い手が足りない介護業界は破綻への道を歩みかねないと言っても過言ではないでしょう。