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【介護離職問題】「介護士の離職」じゃないです、「介護離職」です

ここ最近、「介護離職」について取り上げるメディアが少しずつ増えてきました。

みなさんの周囲でも「介護離職によって、人生計画が狂ってしまった。。。」という方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?

私自身も将来の事を考えると決して他人事とは言えません。

今回は、そんな昨今問題視される「介護離職問題」が介護業界に与える影響について考えてみたいと思います。

「介護離職問題」とは?

タイトルにも書きましたが、そもそも「介護離職」と「介護士の離職」を混同してしまっている方が稀にいらっしゃるので、まず「介護離職」について説明を少々。

■「介護離職」・・・40代~50代の方を主とした働き盛りの労働者が「仕事と身内介護の両立が困難となり、仕事を退職」するケースの事 (近年では毎年10万人程度の介護離職者が生まれていると言われています)

同じ「介護」と「退職」というキーワードが盛り込まれていますが、これだけで「介護離職」と「介護士の離職」は全くの別物だとお分かりいただけると思います。

そして、この「介護離職」の何が問題なのでしょうか。

①離職による企業ダメージが大きい
→介護離職に当たる年齢層(40代~50代)といえば、企業においてもバリバリの中堅層です。
こうした主力とも言える層が退職になってしまうことで、ただでさえ労働者が不足している企業は大きな打撃を受けます。

②離職したもののその後の生活が困窮
→特に死活問題なのがこちら。介護の為といって職場を離れるも、「身内の介護」について終わりは簡単に見えるものではありません。
しかもその間の収入は基本的にはゼロ。当然生活は追い込まれる一方ですね。
こうした経済的な困窮故に、残念ながら「生きることを諦める」というような選択を取られるケースもあります。

こうした問題山積みの「介護離職問題」を国も問題視して「介護離職ゼロ」を公言していますが、様々な打ち手が探られていますが、道のりはなかなか遠いようです。

「受け皿整備(介護施設の増設)」で介護離職は解消されるのか?

ちなみに国の「介護離職」に対しての打ち手について、先日こんな記事を目にしました。

【読売新聞より抜粋記事】

家族の介護や看護を理由に仕事を辞める介護離職について、経済的な損失が年約6500億円に上るとの試算を経済産業省がまとめた。年間約10万人にのぼる介護離職は、収入源を失って離職者の生活が脅かされるだけでなく、企業などの経済活動への影響も深刻なことが明らかになった。

政府は「介護離職ゼロ」を掲げて特別養護老人ホームなどの受け皿整備を急ぐが、試算で明らかになった経済損失額は、厚生労働省が今年度予算に盛り込んだ受け皿整備費(483億円)の約13倍に相当する。

介護をしながら働く人は増え続けており、企業にとって介護離職は、管理職も多い働き盛りの世代の人材流出に直結する。このため、護休業休暇などを国の制度よりも手厚くしている企業は増えている。

記事内には「特別養護老人ホームなどの受け皿整備を急ぐとありますが、果たしてそれが問題解決の糸口になるのでしょうか?

私の答えは「NO」です。 

問題の本質は受け皿の数(施設の数)ではなく、介護士の数です。

介護現場の皆さんがご存知の通り、どれだけ受け皿となる施設の数が増えようと、介護職員が足りなければ、運営に行き詰まります。

実際、今現在でも多くの介護施設で介護士不足故に、新たな利用者確保ができないという自体に陥っているわけです。

肝心の担い手(介護士)の底上げがされない限り、施設が増えたところで、介護士が分散されるだけでなんの意味も成しません。

やはり行き着く課題は介護職の確保に対しての施策となるわけで、こうした観点からも国の介護職確保に向けた施策が必須だというのが伺えるかと思います。

でも少し勉強している方なら、仰るかもしれません「安心してください!国もしっかり介護士確保の打ち手を考えていますよ!」と。

そうなんです、こうした事態を踏まえ、確かに国も介護職確保の打ち手を考え公表しています。

でも本当に効果的な打ち手となるのでしょうか??

「介護離職ゼロ」の実現に向けた人材確保策

現在、国が「介護離職ゼロ」実現に向けて示している打ち手を簡単にまとめると以下のようになります。

①離職した介護職員を介護現場に呼び戻す
 →元介護従事者の再復帰の為の再就職準備金の貸付金制度の充実 等

②担い手の新規参入を促進
  →介護職を目指す学生への学費貸付の充実 等

③現場で働く介護人材の定着を促進

 →処遇改善の拡充や子育て支援やキャリアアップ研修の充実 等

※あくまでも簡単に抜粋しただけですので、詳細にご興味の方はこちらをどうぞ
「介護離職ゼロ」の実現に向けた介護人材確保対策 (厚生労働省資料より)

 

これらを見ると国としても打ち手を試行錯誤していることは伺えます。ただし、一言で言えば「インパクトに欠ける」と私は思っています。

今整備されているような「介護福祉士かつ経験10年の職員への処遇改善8万円」等は、若干期待したくもなるインパクトですが、状況が状況です。

ちょっと小手先の打ち手を講じたところで、大幅改善が難しい事は容易に予想できますね。

【2019年10月】10年経験の介護福祉士に月額8万円の処遇改善!これって信用して大丈夫??最近ニュースでも徐々に取り上げられる事が、多くなってきた2019年の介護福祉士の処遇改善手当。 先日Twitterでも多くの反響を...

「介護休業法」の整備

また「離職」という選択を取る前の打ち手、「介護休業法」についても、随時法整備が進められており、各企業にも義務付けられています。

本当に概略のみですが、以下に書いておきます。

①介護休業について
 要介護状態のご家族1名に対して、93日の休業申請が可能 (67%程度の給与保証)

②時短勤務制度
 短時間勤務制度、フレックス制度、始業・就業時間の調整

③法定時間外労働の制限
 1ヵ月24時間、1日で150日以上の時間外労働を禁止

④深夜労働の禁止 

あくまでも一部ですが、このようにして身内の介護が必要になった職員が仕事と介護を両立できる為の法整備も進められています。

※詳細に興味をお持ちの方の為に、以下に介護休業制度の概要ページの載せておきます。
「介護護休業制度」【概要】(厚生労働省資料より)

ただこうした法令整備が進められたとは言え、実際に介護離職を余儀なくされた方の15%程度しか介護休暇の利用は進んでいないと言われています。

実際、本当に介護が必要になると一時的ではなく、長期での介護体制が必要となるわけですので、現状の法整備だけではなかなか難しいのかも知れませんね。

最後に

いかがでしたでしょうか。「介護離職」が今の日本にとって重要課題であることは間違いありませんし、今後のこの流れは変わらないでしょう。

その為には、介護施設数を増加し、介護の受け皿拡充を進める事も重要、更なる法令の整備も必要。

でもその手前に重要視すべきは、肝心の担い手である介護職員の増加や定着が必須です。

ここまで書いた通り、国も様々な打ち手を模索しています。でもその一方で国が介護現場の実情が見えていないが故に、打ち手自体が中途半端なものにしからならないのでは?と考えています。

給料UPが全てだと言うつもりはありませんが、極端な例を上げるなら、「介護職の平均年収500万に!」というくらいのインパクトを示さない限り、ネガティブイメージが染み付いた介護業界に人が流れてくることはなかなかないと思っています。

「介護離職問題」を契機に介護従事者の雇用環境が抜本的に見直されるには、まだまだ時間がかかりそうですね。

でも一方で本当に少しづつですが、処遇が良くなっている点も事実。でもその感に力尽きている介護現場を離れる介護士がいるのも事実。

どちらが先か、今後の展開に期待したいですね。

 

【耳寄り情報】
■老人ホーム検索 探しっくす (株式会社 メディカルリソース)
東証一部上場の日本調剤グループが運営する、介護施設の情報サイトです。
将来的な身内の介護を含め、介護施設の市場を把握するする意味でも情報を持っておくに越した事はないと思います。
基本的に全国の施設が網羅されていますので、まずは資料を集めておいても良いかもしれません。
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【おまけ】
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