介護士の仕事をしていると、身内で介護が必要になっても「うちには介護のプロがいるから大丈夫!」と過度な期待を掛けられることはありませんか?
もちろん介護士は、介護の専門知識や経験を持ち合わせていますので、家族介護においても活躍できるケースは多分にあるかと思います。
ただし、勘違したくないのは「身内としての家族介護」と「介護士(仕事)としての介護」は全くの別物だという事です。
それにも関わらず「家族介護」というものを安易に捉え、「経験者任せで良い」と考えている方が、稀にいらっしゃいますが、その点は是非本ブログをお読みいただき、改めてもらいたいところです。
介護士は「仕事としての介護」だから頑張れる
大前提として「家族介護」であれ「介護士の仕事」であれ、「大変である」という事に変わりはありません。
更に言えば、時に「家族介護」の大変さは、「介護士の仕事」の大変さを上回ります。
たまに「介護施設では、たくさんの利用者さんのケアしているのだから、家族1人くらい余裕でしょ」と考えている身内の方がいらっしゃるようですが、これは大きな勘違いです。
介護士の「仕事としての介護」が成り立つのには、いくつかのポイントがあります。
【介護士としての介護が成り立つポイント】
①仕事として対価(給与)をもらっているから頑張れる。
②職場には、一緒に介護を頑張っている同僚や仲間がいる。
③利用者は、本来赤の他人であり、余計な感情(イラ立ち)等が芽生えにくい。
④シフトという限られた時間での介護であり、プライベートとのメリハリが付けられる。等々
もちろん中には「将来的に身内の介護ができるようになる為に、資格を取得して介護現場で経験を積んできました」等と仰る方もいますが、多くの介護士は身内の「家族介護」と「仕事としての介護」を明確に切り分けて考えています。
過去のTwitterの投稿からも、介護業界でお勤めのみなさんの「家族介護」に対する見解が見て取れます。
身内に介護職のいる皆さんへ。
「親の介護が必要になってもうちには介護士やってる身内がいるからオールオッケー」
この考えは要注意。
確かに介護の経験や知識があるのは事実。
でも身内の介護を丸受けできるかは別問題。— ごろにぃ@介護コンサル (@goronyi_kaigo) December 7, 2018
「家族介護」ならではの大変さ
先に介護士の「仕事としての介護」であれ、身内の「家族介護」であれ、「大変な事」だという点においては共通だと書きましたが、もちろん「家族介護」には家族介護ならではの大変さが存在します。
【家族介護ならではの大変さ】
①他の身内の協力が無ければ孤独となり、精神的付加が膨らむ。
②身内だという関係性が、時に配慮の無いやり取りとなり、怒りや悲しみといった感情が芽生えやすい。
③常に介護に囲まれた環境に身を置くことで、終わりが見えず、精神的に追い込まれやすい。
④自宅という環境が整っていない中での、長時間介護は身体的に与えるダメージも大きくなりがち。
御覧いただけるとわかりますが、多くが「仕事として介護」をする際のポイントと表裏の関係になっています。
それだけ、「仕事としての介護」と「家族介護」にはギャップがあると言うことです。
よくある負のスパイラル例としては
①「1人で頑張り過ぎる」→②「身内(介護を受ける側)とぶつかる」→③「孤独になる」→④「メリハリが効かなくなる」→⑤「先が見えなくなる」→⑥「精神的にも身体的に追い込まれる」
このように一歩間違うと家族介護では、負のスパイラル発生に介護する側を窮地に追い込みかねません。
大事な事は「協力合う事」と「相談先を確保する事」
このように家族介護では、責任感が強い人ほど自分で抱え込み、精神的に自分を追い込んでしまいます。
家族介護の大変さについては、既に書いた通りですが、特に「孤独な介護」というものが精神的なストレス、肉体的なストレスを助長します。
さらには最終的に頑張りすぎて燃え尽きてしまい、「介護うつ」になるというケースも少なくありません。
これは、介護士としての介護の経験がある人であっても同様です。
だからこそ「身内に介護士がいるから万事OK」というような考え方は本当に危険なものですし、家族・身内でフォローし合うという姿勢は身内の介護にとっては必須です。
また当然の選択肢として、介護サービスの利用についても検討するべきです。
たまに「介護士の自分が介護サービスに頼るのはちょっと…」「自分は介護士だから大丈夫」と仰る方がいますが、こうした思い込みほど怖いものはありません。
介護士であれどうであれ、介護する側が常に全力投球で介護する事を前提に考えるのはなく、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの在宅ケアを皮切りに、介護サービスを併用しながら、自らの身心の健康を維持するがが何よりも大事です。
むしろ上手に介護サービスを併用してこそ、介護業界で働く人間としてのあるべき形ではないでしょうか。
最後に
いかがでしたでしょうか。「仕事としての介護」であれ「家族介護」であれ、どちらも大変な事には変わりありません。
ただし大変さやストレスのポイントは大きく異なってきます。
だからこそ介護士の身内が居ようが居まいが、身内の介護に際しては、全員事として切り分けて考える必要があります。
大事な事は「誰が介護をしようが協力し合える体制を作り、誰かが抱え込み過ぎないようにする」そして同時に「様々な介護サービスの利用について、前向きな資源として併用する」という事です。
これが介護する側、される側の両者が健全な生活を維持する上での必須条件です。
【おまけ】
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