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有料老人ホームパーマリィ・イン明石での「利用者孤独死」を解説

こんにちは「介護コンサルをしながら、現役介護士を両立」がモットーのごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。

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また介護業界で残念と言わざるを得ない事故が発生してしまいました。
表題の通り「有料老人ホームで利用者が孤独死」というものです。

このニュースを見てはじめに「えっ、どういう事?そんな事あり得るの?」そう感た方も少なくないと思います。

でも事実、今回こうした事故が起こってしまいました。

今回はこの事故について、なぜ起きてしまったのか?について、あくまでも第三者としてではありますが、考え記事にしていきたいと思います。

「有料老人ホームで利用者が孤独死」の概要

まず始めに今回の事故について、記事を引用しましたのでご確認ください。

老人ホームで90代男性が孤独死 明石の施設2週間気付かず

24時間スタッフが常駐する兵庫県明石市の介護付き有料老人ホームで、入居者の90代男性が居室で「孤独死」していたことが30日、関係者への取材で分かった。男性は遺体で見つかる約2週間前に死亡していたとみられる。今月上旬に面会した家族に体調不良を訴えたため、家族がスタッフに見守りを求めていたが、施設側は部屋を訪れるなどの安否確認をしていなかった。高齢者施設での「孤独死」という異例の事態に、指導権限のある明石市は施設の対応に問題がなかったか調査を始めた。

同ホームや明石市などによると、5月22日午前9時ごろ、2階の居室で男性が倒れているのを職員が発見した。宿直の担当職員が「最近、(男性の姿を)見ていない」と話したため、ドアを開けて入ったという。医師の検案では今月10日ごろに亡くなったと推定され、死因は分からなかった。

同ホームは夜間も看護師やヘルパーが常駐する。介護保険サービスを提供しているが、男性は介護の必要のない「自立」でサービスを使っていなかった。施設のレストランで食事を取らずに自室で調理し、室内の清掃サービスも利用していなかったという。

今月4日に家族が面会した際、顔色が悪く、腰が痛いなどと訴えた。男性は日常的に「できることは自分でする」などと話していたが、家族はスタッフに「本人は嫌がると思うが、様子を見てほしい」と伝えたという。

しかし施設側は、数日後に男性を見掛けたという報告がスタッフからあったため、体調が回復したと判断し、その後、男性の部屋を訪れるなどの安否確認をしていなかった。

家族から連絡を受けた明石市は、家族や施設側から事情を聴き、今後、対応に問題がなかったか詳しく調べる方針。

同ホームには現在、100人近くが入居。このうち介護保険サービスを利用していない入居者は2割ほどという。同ホームの支配人は「男性は介護保険サービスや清掃サービスなどを利用しておらず、すぐに発見できなかった。反省しなければならず、申し訳ない。再発防止を徹底する」としている。

(出典)神戸新聞NEXT 2019.5.31

事故が起きた「パーマリィ・イン明石」とは?

ちなみに今回事故の起きた「パーマリィ・イン明石」についても少し調べてみました。

こちらにある通り、今回事故のあったパーマリィ・イン明石は株式会社アセットの運営する介護付き有料老人ホームで、平成12年2月に開設されています。

居室数は一般居室46室、介護居室44室となっており、今回事故のあったような介護の必要ない、いわゆる「自立対応」の方もたくさん受け入れていた有料老人ホームだという事がわかります。

ちなみに金額帯を見てもらうとわかる通り、パーマリィ・イン明石は入居一時金が1,811万円~と非常に高額な有料老人ホームである事がわかります。実際ホームページからも9階建ての割と豪華な介護施設である事がうかがい知れます。

「高い金額を払ったのに…」というのは非常に不謹慎ではありますが、ご家族にとってはより一層、悔しさの残る結果だったのではないでしょうか。

今回のような事故は起こり得るのか?

冒頭にも書いた通り、今回の事故について「そんな事起こり得るのか?」という疑問を持たれた方もいると思います。有料老人ホームについて、実態を知らなければ、それは尚更です。

ただし結論から言うと、こうした事故は「起こりえます」

と言う以前に事実、起こってしまったわけですか…

上にも書いたように有料老人ホームでは、「介護を必要としている利用者さん」と「介護を必要としてしていない利用者さん」が共に生活するケースが珍しくありません。

要は有料老人ホームには、大きくわけると2パターンの活用方法があるという事です。

・介護が必要なく「居住地」として利用している利用者

・介護が必要で「生活支援を受ける場」として利用している利用者

今回の事故で言えば、前者の「介護を必要としておらず、居住地として利用していた利用者さん」がお亡くなりになったという事になります。

その為、極論を言ってしまえばマンションで1人暮らしされている利用者さんが、孤独死をされてしまった状況と同義と言え、介護施設側にどこまでの責任を求めるべきかと言うと非常に難しい部分と言えます。

事故を防ぐ事はできなかったのか?

ではこのように「介護を必要としていない利用者」であるが故に、「防ぐことが出来なかったのか?」「仕方のない事だったのか?」という点については、些か疑問が残ります。

利用者さん家族の依頼に対して、十分な対応ができていたとは言えない

現実問題、介護現場は介護が必要な利用者さんの対応に日々追われ、なかなか介護が不要な利用者さんにまで気が行きづらくなりがちです。
それだけに現場を見ていない私が、暗に
「なぜもっと配慮できなかったんだ!」
「介護施設が全て悪い」
等とは言い切る事はできません。

家族が面会した際、顔色が悪く、腰が痛いなどと訴えた。男性は日常的に「できることは自分でする」などと話していたが、家族はスタッフに「本人は嫌がると思うが、様子を見てほしい」と伝えたという

ただし、今回のケースでは上のように、事前に利用者家族からも心配だから様子を見てもらいたいと相談まで受けていたわけです。そうした状況下にあったのであれば、結果論にはなってしまいますが、やはりもう少し配慮をするべきだったと言わざるをえません。
死亡を防げたかどうか別にしても、もう少し早期発見はできたのでは無いかと予測できます。

ちなみにご家族からの「本人は嫌がると思うが」という言葉があるように、あまり施設側からの介入を好まれなかった事も予測され、より難しさもあったのかもしれませんが。

利用者側と施設側に温度差は無かったのか?

また利用者さんやご家族はこのパーマリィ・イン明石を利用するに際して、どこまでのサービスを受けられるのかについて、十分に理解もしくは説明を受けていたのでしょうか?

繰り返しになりますが、有料老人ホームとは言え「自立」の利用者さんとなれば、毎日の安否確認、コミュニケーションを必須としている所ばかりではありません。

それだけにこうした事故が防げたかどうかについても難しい問題であるのは事実です。

それでも個人的な見解として、ご家族側はもう少し行き届いたサービスを期待していたと思いますし、実際の対応として、自立の方に対しても、状況確認についてルール等が確立されているべきではないかと個人的には感じます。

推測に過ぎませんが、そうした意味では利用する側と介護施設側にはサービスについての温度差があったのではないかと感じます。

今後の介護業界に対しての懸念

今回の事故について、みなさんはどのように感じられるでしょうか?

介護施設をよく分かっていない方、ニュースをきちんと見ていない方が「介護施設にも関わらず、このような事があるとは何事だ!」と過度に騒ぎ立てられる事に繋がってしまうのであれば、それは非常に残念な事です。
繰り返しますが、実際「自立」の方に対しての状況把握については、介護施設がどこまで責任を持つかについて、非常に難しい部分です。

ただし、今回のケースで言えばそうした諸々の状況を加味しても、私個人としてはやはりもう少し配慮のある対応をしてもらいたかった、するべきであったと感じずにはいられません。

今回の事故の背景には、ニュースで見えなかったような問題もあるのかも知れません。例えばこのパーマリィ・イン明石が介護士不足で、自立の方に目を配る余裕が無かったのかもしれません。もっと別の問題を抱えていたのかも知れません。

そのあたりはニュースを見ている側にとって推測しかできませんが、せめて今後他の介護施設でも同じような事が起きないよう、自立度の高い方にももう少し配慮が進んで欲しいと願います。
そしてその配慮のできるだけの環境整備や介護士の確保が業界として進められる事に期待したいと思います。