現場リアル

「悪いのは誰?」新人の早期退職と3つの打ち手

多くの介護施設を訪問させていただく中で聞く、施設長の嘆き...「近頃の新人さんは我慢を知らなくてねぇ、なかなか続かなくて本当に困る!」

確かに介護現場での早期離職は由々しき問題ですね。

でもここで考える必要があるのは、原因が「早期退職をした新人」もしくは「受け入れた施設」どちら側にあるのか?はたまた双方に原因があるのか?ということです。

そりゃそうですよね。原因がはっきりしない限り、対策の打ちようがありません。

それにも関わらず、よく確認せず一部の介護施設では、早期退職の原因を新人側のみになすり付けて、何の改善も試みようとしない職場が存在します。

反対に新人が続かない理由を「教育担当者の責任」として押し付けてしまうような職場もあります。

問題はところどころで起こっているということですが、今回はその当たりのポイントを踏まえてブログを書いてみたいと思います。

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そもそも無責任な新人が増えたのか?

まず、この問題を考える上では、大事なのが「新人」の属性に変化があるのかというポイントだと思います。

そして、私の結論としては、「変化がある」というものです。

介護業界の状態を見ればよく分かると思いますが、私がそう思うのは、「介護業界の人手不足が加速し続けているから」という至ってシンプルな理由です。

事実介護業界の有効求人倍率は、3倍を上回っています。

これは「介護業界で働きたい人、1人当たりに3件以上の求人募集が存在する」という事を意味します。

そしてそれがどのように悪循環を及ぼすのかと言えば、

①採用側は、人材が確保できず採用のハードルを下げざるを得ない為、就業意欲の低い人でも採用しないといけない

②新人側は、入社して嫌な事があった場合、次の求人が市場に溢れている為、安易に転職しようという発想になる

このような外敵環境においては、早期退職の決断を安にしてしまう、無責任な新人が増えているというのは事実だと思います。

原因は新人側のみにあるのか?

確かに仕事に対して無責任な人が多くなりつつあるとは、書きました。

だから「早期退職は仕方ない、諦めよう」とはなかなかならないでしょう。

 実際、私の目から見てもこれは「明らかに受け入れ側に責任があるだろう」と言わざるを得ない場面に多々遭遇した事があります。

入社前のやり取りはスムーズでしたか?

受け入れ体制は本当に整えられていましたか?

新人さんへの最低限の配慮はできていましたか?

実は早期退職の理由には、単純な「人間関係が悪い」「介護観が合わない」というもの以外に、「入社までのやりとり」「入社初日の受け入れ体制」が大きく影響していると言われていますし、私自身も転職コンサル時代に、転職間もない新人さんから受けた相談の中には「受け入れ体制に対しての不満」というものが多分に含まれていました。

そして何より注意しないといけないのは、「新人さんは非常に敏感」だということです

新しい環境に対して、期待と不安を詰め込んで飛び込んでくるわけですから、当然ですね。

目の前で起きた偶然を日常として受け止めってしまったり、ちょっとした行き違いや配慮不足に不安を覚えたり、そうした積み重ねが早期退職に繋がるわけです。

もちろん早期で退職する本人に原因があるとは言え、こうした部分への配慮の無さが、新人さんを追い込んでしまっているのは、事実です。

新人受け入れで注意すべき3つのこと

「新人受け入れに配慮を!」と書いた手前、じゃ何をすれば良いの?と質問がきてしまいそうですので、ここで少し私なりの注意すべきポイントをまとめてみたいと思います。

その1.「就業条件は見栄を張らず正しく伝える」

早期退職の大きな理由に「入社前に聞いていた条件と入社後の条件が違う」という例が実は非常に多くあります。

給与面等の待遇面の違いから配属や研修体制の違いまで実に様々。

理由としても単純な言い間違いから、認識不足、本人の勘違い、悪質なのもとしては意図的に…なんてものまでこれまた様々。

特に面接時は、採用したいという想いが強いあまり、ついつい自分の職場の良い話ばかりをして、逆に悪い部分は伏せてしまいがちです。

そして結果、入社してみてやっぱり違うとなるわけです。

新人さんからしたら簡単な詐欺にあったようなみたいなものですね(苦笑

でもよく考えてみましょう。

中途半端に採用・教育して、中途半端に離職されてしまうことが施設にとっては一番の痛手だということです。

コストも人手も掛かります、伝える条件に見栄をはるのでなく、正しく伝え条件に合う新人に入社してもらう、もしくは実態の条件を良くする。これしかありません。

悪意の有無関わらず正確に条件通知は行いましょう。

もちろんネガティブ材料だけでは、だれもその職場で働きたいとは思いませんので、しっかりポジティブ材料を伝えることも大事なのは間違いありませんけどね(苦笑

その2.「入社前のすり合わせは念入りに」

入社前のすり合わせ、これも非常に大事です。

例えば

①勤務初日の持ち物が正しく伝わっておらず、現場で忘れ物した人扱いになる。
 さらに言えばわざわざ購入までしたのに「それじゃダメだよ」と言われる。

初日出勤すると月の予定も確認されていないのにびっしりシフトが組まれている。 等々

こんなことありませんか???

些細なことと言えばそれまでです。

でも何度も言う通り、勤務初日の新人さんは敏感です。

この些細な事がきっかけで、いい加減な施設なんじゃないか?スタッフのシフトの希望さえ聞いてくれない施設なんじゃないのか?と想像を張り巡らすわけです。

悪気が無かったと言えばもちろんそうなのだと思いますが、人の思い込みのきっかけは本当に些細な事です。

そしてあっという間に評価が完成されます(苦笑

だからこそ入り口大事にしましょう!

その3.「現場への受け入れアナウンス、そして声掛けの徹底」

これまた意外によくあるのが、ある日出勤すると誰か知らない職員が働いているという状況。

シフト勤務が故に全員の前で新人さんの紹介なんて事はなかなか難しいかも知れません。

ですが、せめて明日から新人が出勤するくらいの事は事前に伝え、出勤してきた職員は都度あいさつの声を掛けるくらいのことはしてあげて欲しいものです。

初日に各職員から挨拶されるだけ、新人さんは受け入れてもらえているんだという安心感を得ることができます。

まず、新人さんが入社する事をしっかり周知するところからですね。

そしてここにプラスして必要なのが勤務途中の声掛け、更には終業時の声掛け等。

誰かがやってくれるだろう、自分で判断してくれるだろうはNGです。

どんな話をするかというのは二の次で是非積極的に声を掛けてあげてください。※職場の悪口を除く・・・

退勤時間の声かけも一緒です「もう時間だから上がってよー」この一言の有無は本当に重要です。

誰でも不安な中で、周囲の職員に話しかけてもらうだけで救われたりするものです。

忙しい現場で新人さんに声を掛けることはつい後回しになると思います。

でも新人が定着しないと、その忙しい現場が改善されることはありませんよ(笑

最後に

いかがでしたでしょうか。書きたい事を書かせていただきました。

確かに入社してくる新人の就業意欲や責任感は低下傾向にあります。でも、いやだからこそ新人の受け入れ体制というのは非常に大事なものになってきます。

一番言いたい事は、「新人さんと真摯に向き合い大事に育てる」ということです。

受け入れポイントを3つほど上げさせていただきましたが、これもあくまで受け入れ時の本当に初期での話のみです。

注意すべきポイントは、そこら中に広がっており、その為の配慮は大げさなくらいで良いと思っています。

せっかく採用費から研修費までコストを積み重ねて採用し教育した新人さんが早期で退職するほど無駄な事はありません。

そしてなにより、忙しく大変な現場を好循環に導くには新たな力は必須です。

自分の職場を少しでも働きやすい環境にしたい、そんな思いが少しでもあるならば是非この当たり前を見直してみてください。

偉そうに失礼しました(苦笑