こんにちは「介護コンサルをしながら、現役介護士を両立」がモットーのごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。
介護現場の給与問題は、どこの介護施設にとっても死活問題。
特に介護事業所間での競争が激しくなる過程では、経営サイドによる過度な人件費抑制が問題となっているケースが最近増えつつあるように感じます。
そうした現状を踏まえて、先日以下のようなTweetをしました。
介護業界では従業員の給与を上げると「損」みたいな発想の会社が結構多い。
少しでも人件費を削ろうと…でも結局人が辞めて入れ替わる事で掛かる採用コスト、何より現場介護士が定着しない事のリスクを甘く見過ぎ。
事故リスクUP
非効率UP
残業時間UP等…結局、過度な職員の入れ替わりが1番損。
— ごろにぃ@介護コンサル (@goronyi_kaigo) May 25, 2019
今回は、こうしたTweetを掘り下げて、介護施設の給与押し下げが巻き起こす、負のスパイラルについて、記事にしていきたいと思います。
介護施設における人件費(給与)の割合
介護施設のコストと言えば、やはりメインは人件費です。
実際、介護事業における人件費率(人件費÷収入)は比較的高く、以下のような調査結果もあります。
よく
「入居系サービスの人件費率が60%~70%」
「在宅系サービスの人件費率が65%~80%」
この程度が水準だと言われます。
■「人件費率」=「人件費」÷「収入」
※売上に占める人件費(給与等)の割合
それだけコストの主軸となる人件費だけに、介護事業所の運営者側は特に人件費に対してシビアになりがちです。
これは経営する側にとっては当然の話です。
ただそのシビアさが時に、介護施設の運営の悪循環となる事も少なくありません。
給与を上げると「損」は目先の発想からくるもの
例えば上のTweetが良い例ですが、「人件費を削減しなければならい」となると多くの介護事業所は「介護士の給与を上げてはいけない」という発想を持ってしまいます。
確かに闇雲に目先の給与をアップしてしまうと、人件費率がより高くなり運営が難しくなるリスクがあります。
更に言えば、介護事業所の多くの財源は介護保険に依存するものです。
それだけに別の業種のように「従業員の給与を上げても、売上が上がっているから大丈夫!」というような構図にはなりづらいというのが実情です。
①介護事業は、介護保険に依存部分が大きく、売上の天井が決まってしまいがち
②売上の天井が見えるとよりコスト管理の意識が高くなる
③コスト管理の意識が高まる結果、コストにしめる人件費(給与)に対してシビアになる
④結果「給与を上げない」「人を採用しない」という目先の対応が増える
このように目先の利益に目配れば配るほど、目の前の介護士の人件費に対してシビアになる傾向が見られ、事実「従業員の給与を上げると損」「人員配置を削らないと損」というような発想になっている介護事業所も少なくありません。
低賃金が巻き起こす負のスパイラル
このように目先の対応の結果、巻き起こる事として「介護士の給与」「人員配置」にシビアになる介護施設が多いわけです。
が、しかし
こうした目先の対応(過度なコスト削減)こそが、事業の根幹を揺るがすものになるリスクがあるという事を整理しておく必要があります。
上記は先日Twitter内でのアンケートを元にした記事ですが、ご覧いただくとわかるようにどれだけ綺麗ごとを並べたとしても「介護士もお金を欲しています」。
その介護士が求めている「お金」すなわち「給与」に対して、過度にシビアになると当然の事ながら負のスパイラルが発生してしまいます。
介護士が退職する、すなわち「介護士が定着しない」事によるリスクが増大します。
新たな介護士を採用する為のコスト増
当然、介護士が定着しなければ新たな介護士を採用する必要が出てきます。
ただし、昨今の介護士不足の状況では、ハローワーク等の無料の媒体に求人掲載しただけでは、簡単に採用できなくなっています。
・求人紙、折込広告等の紙媒体での求人活動
・求人サイトへの求人掲載等、WEBでの求人活動
・派遣会社、人材紹介会社の活用
これらのように、いずれも「採用する」という行為に対して、新たなコストが発生します。
業務レベルが落ちる事によるコスト増
またベテランで業務の勝手を分かっている介護士が抜けてしまう事によるリスクも上昇してしまいます。
・業務効率が落ちて残業時間が増加
・業務レベルが落ちて、事故や失敗が増加
こうした事が起きる事で、新たな残業代等のコスト、また事故や失敗を補填する為のコストやリスクが上昇してしまいます。
新人を教育する為のコスト増
また頑張って新人を採用しても「採用して終了」ではありません。
・新人が業務を覚えるまでの二重シフト
・新人のカバーによる、他の介護士の業務増
これらのように、新人を採用することができても、それはスタートラインに過ぎません。
すぐに辞めてしまわれては元も子もありませんし、教育期間中は完全に二重での人員投資が必要となり、コストが重なります。
信用を失うリスク増
そして何より、コスト以上に「信用」「信頼」を失うリスクが急激に上昇します。
・介護士が定着しない事で信用で、利用者さんやその家族から信用を失う
・常に募集している事で、介護士からの人気や信用を失う
それこそ、それぞれのコスト以上に「信用」「信頼」を失う事のリスクの方が、地域で運営していく介護事業所にとってはリスクの高い事になります。
介護士や利用者さんが寄り付かない介護事業所が健全な運営ができるとは考えられません。
最後に
いかがでしょうか?
介護施設におてい重要なコストの管理、特にシビアになりがちな人件費(給与)の問題。
繰り返しになりますが、なかなか売上が青天井とはいきづらい介護業界において、人件費を始めとしたコストの管理を正しく行う事は非常に大事な事です。
ただし目先だけを見つめて「給与を上げると損」と安直な判断ばかりをしていると介護士が定着せず、更には介護士や利用者さんの寄り付かない介護施設に成り下がってしまうリスクもあります。
今回の人件費や給与の話ばかりでなく、残念ながら介護事業所の経営者の方の中には、あまりにも目先での安直な判断をする方が少なくないように感じます。
「目先がなければ、未来がない」と言われてしまえばそれまでですが、経営する側の人間が長期的な視線を持てずして、健全な介護現場の構築は難しいと私は常々考えています。
そうした意味での参考となる記事となっていれば幸いです。