現場リアル

「介護施設の指定取消が過去最多」不正請求・虚偽報告の実態

こんにちは「介護コンサルをしながら、現役介護士を両立」がモットーのごろにぃ(@goronyi_kaigo)です。

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介護業界と言えば、
「奉仕の精神」
「利用者さん主義」等々
いわゆる「不正」や「虚偽」というものとは、相反する業界だとイメージする方も少なくないと思います。

しかしながら、そんな介護業界に残念なニュースが飛び込んできてしまいました。

「不正」や「虚偽」の請求等により、指定取消(停止)処分を受けた介護事業所が過去最多を記録

現場のイチ介護士として働いている中では、なかなかピンとこない問題かもしれませんが、一部の介護事業所で、こうした不正や虚偽が横行してしまっているというのが、実態です。

今回はこの「介護施設の指定取消」そして、その原因となる「不正」や「虚偽」について、記事を書いてみたいと思います。

介護施設の指定取消(停止)処分を受けた介護事業所が過去最多を更新

直近の厚労省から発表されているデータは2017年までのものが最新となりますが、下記の通り、指定取消や停止の処分を受けた介護事業所数が過去最多を記録してしまっている事が確認できます。
実に2017年には実に257事業所もの介護事業所が指定取消・停止処分を受けています。

営利法人での不正が77%を占める

不正が摘発された介護事業所を法人単位で見ると、以下のような傾向が見られます。

①営利法人:77.0%
②医療法人:9.3%
③NPO法人:6.6%
④社会福祉法人:3.5%

このように営利法人が77%と悪い意味での圧倒的シェアを確保しています。
ここについては、世間の介護事業所における営利法人の割合が最も高いわけですので、一概に営利法人だけに問題があるとは言いませんが、数字上はこのような結果になります。

これでは益々「営利」=「悪」というようなイメージに繋がってしまいかねません…

在宅系のサービスで目立つ不正

また処分を受けた介護事業所をサービス種類別に見ると「訪問介護」が最多で、以下、「居宅」・「通所」と在宅系のサービスが続きます。

①訪問介護:84件
②居宅介護支援:38件
③通所介護:34件
④グループホーム:13件

このように在宅系のサービスが、不正件数の上位を独占する形となってしまいます。
ただし、こちらも営利法人の件と同様で、世の中の在宅系の事業所数は入居系の事業所数を大きく上回っていますので、一概に在宅系ばかりが問題とは言えません。

ただし傾向として「個人経営の法人」等、小さな法人ほどリスク意識が低く「まぁいっか」「これくらい大丈夫」と暗にグレーな対応をするケースも見受けられます。
いわゆる大手と比較して、小規模の法人の方がこうした行政手続きが雑に行われる傾向にあるのも影響しているかも知れません。

こちらに厚労省が発表している詳細のデータリンクを貼っておきますので、良ければ活用下さい。

介護サービス事業所に対する監査結果の状況及び介護サービス事業者の業務管理体制の整備に関する届出・確認検査の状況

指定取消処分の具体事例

それでは指定取消の処分を受けた介護事業所は、具体的に「どのような不正を行い摘発されているのか」について、過去のニュースを取り上げて掘り下げてみたいと思います。

例1.サービスの提供時間を虚偽申請

介護給付費を不正請求、介護施設の指定取り消し

介護給付費を不正請求するなどしたとして、大阪府八尾市は28日、介護サービス会社「介護センター福」(同市福万寺町南)を介護保険法にもとづき、居宅介護支援事業者の指定取り消しと、同日から6カ月間、居宅サービス事業で利用者の新規受け入れを停止する処分を行った。市は不正受給に伴う加算額を含めた86万5916円の返還を求める。

市によると、同社が運営する居宅介護支援事業所「ケアプランセンター福」で平成28年9月4日から1年間、居宅サービス計画を作成しないなど運営基準の減算に該当すると知りながら介護給付費を不正に請求し、61万8512円を受給した。

また訪問介護を行う「ヘルパーセンター福」では、サービス提供の実際の時間ではなく、居宅サービス計画に記載された時間をもとに実施記録を作成する運営基準違反などがあった。

(出典)産経新聞 2019年3月29日

このケースで言えば、2点の不正が行われている事になります。

①減算対象になる請求を通常通りに請求

②サービスの実態と異なる報告を行い、虚偽請求

言うまでもありませんが「論外」ですね。

しかしながら、上でも少し触れた通り「これくらい大丈夫」と暗にこうした不正に手を染めてしまう介護事業所も少くありません。

例2.現場職員の配置を虚偽申請

介護報酬を不正受給 尼崎の2事業所が指定取り消し

兵庫県尼崎市は22日、運営する介護事業所2カ所で常勤職員がいるかのように偽って介護報酬を不正に受給したとして、同市の不動産関連会社の介護事業者指定を取り消したと発表した。市は不正請求で受けた給付費約3050万円に加算額を加えた計約3650万円の返還を求める。処分は20日付。

同市によると、同社が営む介護事業所は2016年10月にデイサービス事業の指定を受ける際、勤務実態のない女性を常勤の生活相談員と偽って申請し、今年3月まで約2年半にわたり不正に介護給付費などを受け取った。

また、別の介護事業所では、17年1月に訪問介護事業の指定を受ける際、非常勤の訪問介護員を常勤として偽り、1人以上の配置が必要な訪問事業責任者を一度も置かなかった。

(出典)神戸新聞NEXT 2019年3月22日

このケースで言えば、人員配置の虚偽という事になります。

①従業員の雇用形態を偽り、虚偽請求

②配置基準を満たさない中で、運営していた

これもまた言うまでもなく「論外」という事になります。

特に「介護士不足」に苦しむ介護事業所が、人員配置を偽って虚偽請求するというケースが最近は増加傾向にあるように感じます。

なぜ介護業界で不正が頻発するのか?

では「介護業界において、なぜこのような不正が頻発してしまうのか」についても考えてみたいと思います。

経営者を始めとした管理職の意識の低さ

やはり最も大きな原因は経営者の「意識の低さ」という事になるでしょう。
逆に言えば、申請ミスでも無い限り、正しく経営者としてのモラルや意識を持っていればこのような虚偽の請求に至るはずもありません。

「これくらいバレないだろう」

「他の介護事業所もグレーな事をやっている」

こうした意識の低い判断や無責任な考え方が不正や虚偽を助長させてしまっているのが実情です。

経営に苦しむ介護事業所の最終手段

また現在の介護業界は「経営が順調な法人」と「経営に苦しむ法人」の格差が広がるばかりです。
そして「経営に苦しむ法人」には、よく以下のような傾向が見られます。

・冷静にフラットに物事を判断できない

・目先にばかり追われる対応をする

まさに行き当たりばったりの経営です。

この行き当たりばったりの経営を行う法人が、運営に苦しみ、その結果として行き当たりばったりの不正に手を染めてしまうというケースも少なくありません。

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最後に、今後の介護業界で「不正」や「虚偽」は無くなるのか?

ここまでお読みいただきありがとうございました。
残念ながら不正や虚偽が蔓延る介護業界。
それこそ不正や虚偽は、介護業界に限ったものではありません。

ただし「制度ビシネス」「保険ビジネス」として介護事業が成り立っている中、一部の問題ある経営者が、こうした制度を逆手に取り不正に手を染めやすい環境があるというのも事実だけに難しい問題です。

それこそ未だ摘発を受けておらず、不正が行われている介護事業所は相当数存在していると予測されます。
私自身、コンサルトして介入させていただく際に、問題あるケースに遭遇する事が決して少くもありません。

ただし現実問題として、こうした不正と摘発は、一定どこまでいってもイタチごっこの側面を持ち合わせてしまうというのが、私の考えです。
各介護事業所が、どのような体制で運営されているかについては、現場に張り付きでもしない限り完全には見えません。

ただ、介護業界が「正直者がバカを見るような業界」には決してなって欲しくはないですし、そんな文化が浸透した業界が健全に伸びるはずもありません。
その為には、国の徹底した管理体制はもちろんながら、現場からの正しい声の発信なども必要になってきます。
上でも書いた通りですが、現場で起きている事は最終的に現場でしか確認ができませんし、外から見える不正摘発限界があるというのが実態です。

正しい制度の運用の中で、介護業界が正しく発展する事。
その結果が、我々介護業界で働く労働者が正しく評価される事に繋がります。

もし万が一目の前で不正を目撃したら、勇気を持って声をあげる。
そんな介護士が評価される介護業界へと変貌を期待したいと思います。