介護施設の人件費削減が危険な理由|現場で起きる5つの悪循環と見直し方
介護施設の人件費を一律に削減すると、短期的には支出が減っても、離職・残業・採用費・事故リスクが増え、結果的に総コストが膨らむ可能性があります。
削るべきなのは必要な配置や教育ではなく、重複業務、非効率なシフト、採用のやり直しなどです。数字だけでなく、現場で何が起きるかを合わせて確認します。
一律の人件費削減で起きる5つの悪循環
- 欠員で残業と休日出勤が増える
- 教育時間が減り、早期離職が増える
- 採用広告・派遣・紹介費が増える
- ヒヤリハットと事故リスクが高まる
- サービス低下で稼働率や評判に影響する
施設運営支援の経験では、給与だけを下げても総コストが下がるとは限りません。採用費、派遣費、残業、教育のやり直しまで含めて確認する必要があります。
管理者が確認したい項目
- 部署別の欠員数と残業時間
- 採用1人あたりの広告・紹介費
- 入職3か月・1年以内の離職
- 派遣費と直接雇用の比較
- 業務分担やICTで減らせる作業
人手不足による危険は、介護の人手不足を見抜く7つのサインも参考にしてください。
介護施設における人件費(給与)の割合
介護施設のコストと言えば、やはりメインは人件費です。
実際、介護事業における人件費率(人件費÷収入)は比較的高く、以下のような調査結果もあります。
よく
「入居系サービスの人件費率が60%~70%」
「在宅系サービスの人件費率が65%~80%」
この程度が水準だと言われます。
■「人件費率」=「人件費」÷「収入」
※売上に占める人件費(給与等)の割合
それだけコストの主軸となる人件費だけに、介護事業所の運営者側は特に人件費に対してシビアになりがちです。
これは経営する側にとっては当然の話です。
ただそのシビアさが時に、介護施設の運営の悪循環となる事も少なくありません。
給与を上げると「損」は目先の発想からくるもの
例えば上のTweetが良い例ですが、「人件費を削減しなければならい」となると多くの介護事業所は「介護士の給与を上げてはいけない」という発想を持ってしまいます。
確かに闇雲に目先の給与をアップしてしまうと、人件費率がより高くなり運営が難しくなるリスクがあります。
更に言えば、介護事業所の多くの財源は介護保険に依存するものです。
それだけに別の業種のように「従業員の給与を上げても、売上が上がっているから大丈夫!」というような構図にはなりづらいというのが実情です。
①介護事業は、介護保険に依存部分が大きく、売上の天井が決まってしまいがち
②売上の天井が見えるとよりコスト管理の意識が高くなる
③コスト管理の意識が高まる結果、コストにしめる人件費(給与)に対してシビアになる
④結果「給与を上げない」「人を採用しない」という目先の対応が増える
このように目先の利益に目配れば配るほど、目の前の介護士の人件費に対してシビアになる傾向が見られ、事実「従業員の給与を上げると損」「人員配置を削らないと損」というような発想になっている介護事業所も少なくありません。
低賃金が巻き起こす負のスパイラル
このように目先の対応の結果、巻き起こる事として「介護士の給与」「人員配置」にシビアになる介護施設が多いわけです。
が、しかし
こうした目先の対応(過度なコスト削減)こそが、事業の根幹を揺るがすものになるリスクがあるという事を整理しておく必要があります。
上記は先日Twitter内でのアンケートを元にした記事ですが、ご覧いただくとわかるようにどれだけ綺麗ごとを並べたとしても「介護士もお金を欲しています」。
その介護士が求めている「お金」すなわち「給与」に対して、過度にシビアになると当然の事ながら負のスパイラルが発生してしまいます。
介護士が退職する、すなわち「介護士が定着しない」事によるリスクが増大します。
新たな介護士を採用する為のコスト増
当然、介護士が定着しなければ新たな介護士を採用する必要が出てきます。
ただし、昨今の介護士不足の状況では、ハローワーク等の無料の媒体に求人掲載しただけでは、簡単に採用できなくなっています。
・求人紙、折込広告等の紙媒体での求人活動
・求人サイトへの求人掲載等、WEBでの求人活動
・派遣会社、人材紹介会社の活用
これらのように、いずれも「採用する」という行為に対して、新たなコストが発生します。
業務レベルが落ちる事によるコスト増
またベテランで業務の勝手を分かっている介護士が抜けてしまう事によるリスクも上昇してしまいます。
・業務効率が落ちて残業時間が増加
・業務レベルが落ちて、事故や失敗が増加
こうした事が起きる事で、新たな残業代等のコスト、また事故や失敗を補填する為のコストやリスクが上昇してしまいます。
新人を教育する為のコスト増
また頑張って新人を採用しても「採用して終了」ではありません。
・新人が業務を覚えるまでの二重シフト
・新人のカバーによる、他の介護士の業務増
これらのように、新人を採用することができても、それはスタートラインに過ぎません。
すぐに辞めてしまわれては元も子もありませんし、教育期間中は完全に二重での人員投資が必要となり、コストが重なります。
信用を失うリスク増
そして何より、コスト以上に「信用」「信頼」を失うリスクが急激に上昇します。
・介護士が定着しない事で信用で、利用者さんやその家族から信用を失う
・常に募集している事で、介護士からの人気や信用を失う
それこそ、それぞれのコスト以上に「信用」「信頼」を失う事のリスクの方が、地域で運営していく介護事業所にとってはリスクの高い事になります。
介護士や利用者さんが寄り付かない介護事業所が健全な運営ができるとは考えられません。
最後に
いかがでしょうか?
介護施設におてい重要なコストの管理、特にシビアになりがちな人件費(給与)の問題。
繰り返しになりますが、なかなか売上が青天井とはいきづらい介護業界において、人件費を始めとしたコストの管理を正しく行う事は非常に大事な事です。
ただし目先だけを見つめて「給与を上げると損」と安直な判断ばかりをしていると介護士が定着せず、更には介護士や利用者さんの寄り付かない介護施設に成り下がってしまうリスクもあります。
今回の人件費や給与の話ばかりでなく、残念ながら介護事業所の経営者の方の中には、あまりにも目先での安直な判断をする方が少なくないように感じます。
「目先がなければ、未来がない」と言われてしまえばそれまでですが、経営する側の人間が長期的な視線を持てずして、健全な介護現場の構築は難しいと私は常々考えています。
そうした意味での参考となる記事となっていれば幸いです。\n
人件費を見直す前に確認したいこと
介護現場のコストを考えるとき、人件費だけを単純に削ると、現場の負担や離職、サービス品質に影響することがあります。まず、残業、欠勤対応、採用、教育、記録作業など、見えにくいコストも含めて全体を確認しましょう。表面上の支出が減っても、別の場所で負担が増えていないかを見ることが重要です。
業務を見直す場合は、利用者の安全に直結する仕事と、手順を整理できる仕事を分けます。記録様式の重複、申し送りの長さ、物品の置き場所、急なシフト変更などは、職員の工夫だけでなく、仕組みとして改善できる場合があります。現場の声を聞かずに変更すると、運用が定着しないため、試行期間を置いて結果を確認しましょう。
人員配置や採用条件を考える際は、短期の数字だけでなく、教育にかかる時間、経験者が残る効果、安定したチームづくりまで含めて判断します。無理なく続く方法を選ぶことが、結果として長期のコスト抑制につながります。
- 見えにくい業務コストも一覧にする
- 安全に関わる業務を優先して守る
- 変更後は現場の負担と品質を確認する
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